〜VOICE ACTOR〜
□告白は突然に……
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今日はドラマCDの収録、私にとっては初のBLドラマCD。
“いくら男性役が多いからって、私が攻ってどうよ。
…………っていうか売れるのかな私で……、超プレッシャーなんですけど……”
【来る物は拒まず】がモットーの私は、今回のドラマCDのオーディションも当然ながら断らなかった。
原作の先生からの指名だったらしく、オーディションと言うのは名目だけで実質、キャラクターの台詞確認をした感じで終了した。
この原作は、実は私も持っていて……作品的に好きだったのでシリーズは全巻持っていたりする。
それを先生に話した時はとても喜んでくれて私も嬉しかった。
他のキャストさんは誰がいるのか知ったのは台本が届いた数日前だった。
原作は知っているものの、脚色されている部分も多いから台本はきちんと目を通す。
“……なるほどね、こんな感じになるのか……あっ、他の配役誰だろう?”
最初に戻り、キャスト一覧を見てみると豪華声優陣に私は一瞬顔が引きつった。
“……まさか、マジかコレ……どれだけプレッシャーだよ。それに、相手役が平川さんて……私、出来るのかぁ!?”
頭を抱えたくなるが、引き受けた以上はきちんとやらなくてはならない。
自分に言い聞かせ台本の読み込みをして今日に至るというわけなのだが、不安でいっぱいな私はいつもよりもより早くスタジオ入りしたのだが、私より早い人がいて驚いた。
「おはよう成城さん。……今日はよろしくね」
「平川さんっ!?
……お、おはようございます。私も早く来たつもりだったんですけど……私より上手がいた……」
ついポロッと言ってしまった私に、平川さんは笑っていた。
「はははっ……本当にごめんね。
今日は君と一緒にやるからさ……早く目が覚めちゃて……家でぷらぷらしてるより良いかな?って思って来てたんだ」
思わぬ平川さんの言葉に私は驚いた表情で見つめていた。
「……えっ!?……そ、そんな風に思ってくれてたんですか?」
私の言葉に、平川さんは自分の言葉を思い出してハッ!となると、顔を赤くして頭をかいた。
「えっ、と……参ったな……君に言うつもりじゃなかったんだけど……実は、……」
「「おはようございまーす」」
平川さんが何かを言おうとした時、タイミング良く他のキャストさんがやって来て平川さんは慌てて口を閉じた。
入って来たのは鳥海さんと安元さん。……前の仕事も一緒だったらしく2人で来たのだそうだ。
「……おはようございます」
「おはようございます。……ん?どうかしましたか?」
私がそう声を掛けると、鳥海さんと安元さんは私と平川さんを交互に見て呟いた。
「俺らタイミング悪かったかな?」
「……えっ、と……それはどういう……」
私がどうして?という感じで首を傾げると、安元さんが私の耳元で小さく呟いた。
「いや、平川さんが怒ってるから……」
「えっ!」
私が平川さんの方を見てみたが、平川さんはいつもと同じようにしか見えなかった。
しかし、安元さんの言葉にも一理ある。……先程、平川さんが2人に挨拶した時、あまりにも素っ気なかったからだ。いつもの温厚な平川さんらしからぬ挨拶。
そう思って平川さんに声を掛けようとする前に他のキャストさんがぞくぞく集まってきて結局平川さんとは話が出来なかった。
その後、読み合わせ、テスト、本番とドラマCDの収録はあっという間に進み……何とか無事に録り終える事が出来た。
次の収録がある人や雑誌の打ち合わせなどで次々とキャストさんは減っていき、このスタジオに残っていたのは私の他に、平川さん、鳥海さん、梶さん、松岡さんだった。
そんな残っていたメンバーにスタッフが声を掛けてきた。
「お疲れさまでした。
皆さんこの後お暇なら作家の先生が一緒にご飯如何ですか?って、おっしゃってるんですけど……」
スタッフの言葉に、皆が顔を見合わせる。
最初に返事を返したのは梶さんだった。
「すみません。……次のナレーションの収録までに原稿読み込んでおきたいんで、食事の時間はちょっと取れなそうなんで俺はパスです」
それを聞いた鳥海さんと松岡さんは「えぇ!!」と声を上げた。
「せっかくなんだし、一緒に行きましょうよ梶さん」
「そうだよ〜、少し位なら大丈夫だろ〜?」
松岡さん、鳥海さんにそう言われて梶さんは迷ったあげく行く事にした。それを見ていた私と平川さんも「行かなきゃ駄目だな」と呟いて一緒に行くことになったのだった。
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