短編

□純潔悪魔と悪徳天使
1ページ/12ページ



純潔悪魔と悪徳天使


 
 昔々、あるところに…いいえ、あの世の天国というところに悪魔が、地獄というところに天使が住んでいました。

 天国と地獄というのは、大多数の死者が蔓延り混沌としたあの世の秩序を作るため、神様がこの世を挟んで上下に分けた死者たちの園でした。
 悪魔と天使というのはその時たまたまその世界にいた死者の魂のことで、悪魔は黒い翼を持ち、天使は白い翼を持っていましたが、その他には何ら大差ない両者でした。


 神様はふたつの園をお創りになって間もなくはご自分で死者の魂を仕分けしていました。しかし、神様はたいそう怠慢なお方でしたので、すぐに毎日毎日新たにやってくる死者の魂を裁き切れなくなってしまいました。そこで、仕事が嫌になった神様はご自分の仕事を悪魔と天使にやらせることにしました。
 しばらくは機械的に仕事をしていた悪魔と天使でしたが、徐々に気の合う者同士が集まるようになり、善者は悪魔に連れられ天国に、悪者は天使に連れられて地獄に集まって行くようになりました。


 年月は経ち、悪魔と天使たちの働きによって少しずつ秩序が作られてきたと思われたあの世でしたが、大多数の魂は死後の世界にうららかな後生だけを求めてやってきておりましたので、自分たちに任された任務にはほとんど精を出していませんでした。
 このままだとあの世は飽和状態になってしまう、けれども自分で働くのは嫌だ、と困った神様は良いことを思いつきました。
 1年で1万の魂を仕分けした者には転生許可を与える、という新しい制度を設置することにしたのです。
 あの世を統制の取れたものにし、人口減少も期待できるし、一石二鳥!と意気込む神様でしたが、この制度の評判はイマイチでした。喜び勇んで仕事に精を出す者よりも、第二の人生になど全く興味のない者の方が多かったからです。しかも、そういった者たちには制度そのものの認知が浸透しませんでした。

 しかも、この制度は新たな問題の火種になってしまいました。
 神様が任せた魂の仕分け作業によって悪魔の善化、悪魔の悪化が進み、両者間の溝が深くなってしまったのです。
 そしてそれはあの世の秩序を守るために魂の仕分けをする悪魔とそれを邪魔する天使、転生したい天使とそれを阻止しようとする悪魔との戦いに発展し、神様はその後何百年もこの問題に頭を抱える羽目になってしまいました。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ