短編

□純潔悪魔と悪徳天使
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 中でも神様の頭を最も悩ませたのは、ラミレスという天使でした。
 ラミレスは自分でもいつ死んだのか分からないくらい遠い昔に死んだ男の天使で、その名の通り雷を自在に操る能力を持っていました。
 ラミレスは積極的に仕事をしていましたがとても強いこだわりを持っており、自分の気に入った魂しか仕分けをしませんでした。そのため、自分好みの魂を見つければ敵味方関係なく奪い取ったり、わざわざこの世まで赴いて生者の魂を連れて来たりしていました。ラミレスは専ら自身の能力を使いましたので、ラミレスがこの世へ赴けば必ず複数の死者を出し、あの世の人口を増やすことになりました。
 ラミレスの行く先では争いが絶えず、また、彼の能力の強さと尊大な態度には敵う者が誰ひとりといないため、神様は早々に諦めて匙を投げておしまいになられました。
 あの世の住人のみならず、この世の住人たちまでもそんなラミレスに日々の生活を脅かされていましたが、いつしかラミレスをものともしない、まるで正義の天使のような…いいえ、正に純潔の悪魔が出現したのです。


 その悪魔の名はメフィストと言いました。
 メフィストは200年ほど前に死んだ悪魔で、正義と使命感に溢れてる女でした。
 メフィストは毎年1万以上の魂を仕分けしていましたが、本人には転生したいという気持ちは全くありませんでした。
 神様は再三メフィストに転生を勧めましたが、メフィストは断り続けました。
 神様はあの世の人口をひとりでも減らしたいところでしたが、メフィストがいれば厄介な問題にご自身で対処しなくても良いことに気が付き、メフィストに転生を勧めることはお止めになりました。
 それからはくるくるとよく働くメフィストを大変重宝なさり、何か面倒が起きると必ず彼女を遣わせました。


 ですから、四六時中悪事を働くラミレスとそれを阻止するメフィストは、必然的によく相見えることになってゆきました。
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