Book・Clap
□大事なもの
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大掃除の翌日は、不寝番のゾロが走り回る足音で目が覚めました。
それ程に、とてもうるさかったのです。
まあ、起きてしまったのは仕方ないのでキッチンに行くと、怖い顔をしたゾロが、ばっと近づいてきて言いました。
「おれのハラマキしらねぇか」
今にも斬りつけそうな勢いです。
わたしはびっくりして黙っていました。
「あったら絶対教えてくれ」
必死に言われたので、わかった、でもねと続けました。
「大切なものは、自分の胸に聞いてみたら?」
「……………………あ」
どんな寝方をしたらゾロみたいな体型でも、ハラマキが胸まで上がってしまうのかなぁという疑問は、
「……取り乱しました」
と、ゾロがわたしに頭を下げたからすっかり聞けませんでした。
またこうやって年がめぐっていくのだなぁと思いました。
fin