Book・Clap
□ゾロ先生
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「――ねぇ、ゾロ先生」
「次は、なんだ」
誰もいない体育倉庫。
器具の点検真っ最中のゾロ先生に、わたしは付き纏っている。
「わたしが先生のこと、好きって言ったらどうします?」
「……大人をからかうもんじゃない」
竹刀の数を数えながら事もなげに答えるゾロ先生は、わたしを見ようともしない。
「違います!からかってません!教えてください!」
「ったく……、その眼が、」
呟くようにそう言って、ゾロ先生は漸くわたしを見た。
困ったような顔をして。
「眼?……わたしのですか?」
「そうだ。……そんな健気な眼で見るな。……このままだと、おれは先生でいられなくなるぞ。……わかるか?」
「……?」
「……おれが“男”にならないうちに、さっさと帰れってことだ」
わたしにはよく分からない顔で微笑んだゾロ先生は、
「あと少しで卒業だろ?……質問の答えは、それまで待ってろ」
と言って、わたしの頭をぽんぽんと叩いた。
ねぇ、ゾロ先生。
質問訂正します。
好き、じゃなくて、大好き、です。
fin