Book・Clap
□サンジ先生
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昼休みはクリニックの自室に篭って、昼食を摂りながら学会の資料に目を通す。
暫くすると、こんこん、とノックをする音に続いて、いつもの声が聞こえた。
「サンジ先生、そろそろ診察のお時間です」
「今行くよ。ありがとう」
いつの頃からだっただろうか。
今の声の主、このクリニックのナースに呼ばれたいがため、時間ぎりぎりまで自室に篭るようになったのは。
好き、と気が付いたのは。
資料を片付けて、白衣に腕を通した。
診察室へ入ると、待ち構えていたかのようにさっきのナースがカルテの山をどさり、と置く。
「最近更にお忙しそうですね。学会前だからですか」
「あー……、そんなところ。……だからさ、」
「はい?」
「これからも午後の診察前に、呼びに来てね。……他のナースが来ても、おれ、自室から出ないよ?」
途端に顔を真っ赤にして、はい、と返事をする白衣の天使。
愛おしくて堪らない。
いつかそのうち、いや、かなり近いうちに。
ナース服を着ていない君に、白衣を着ていないおれの名を呼んで欲しい。
ドクターも先生も付かない、一人の男としての、おれの名を。
fin