Book・Clap

□危険な関係
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「――あぁっ!!麗しの!せぇぇんせぇっ!!」


わたしの領域、保健室の

扉を勢いよく開けた金髪頭、うちの生徒。


「……もう少し静かに入っていらっしゃい。失礼します、って。今、誰もいないから良かったけど」
「それは失礼いたしました。プリンセス。……先生の美しさに、おれは平常を保てなかった。その可憐な、」


「わたしは先生よ、保健室の先生。お姫様じゃないの。……で、サンジくん?具合でも悪いの?」
「胸が張り裂けそうに痛みます。恋の病です」


はぁ、と溜め息が零れた。
サンジくんは毎日ここへ来ては、いつもこの調子。
わたしをからかっているんだか、時間潰しのつもりなんだか、よく分からない。


「毎回言うけど、恋の病は保健室では癒えないわ。……もう戻りなさい。昼休みも直に終わるから」
「いや、癒えるんです。こうして先生と会えるだけで、話せるだけで、」


色素の薄めな瞳が、真っ直ぐにわたしを見つめている。
真摯な声色。
いつもとは、何かが違う……?


「おれは幸せだから」
「……そう」


それ以上何も言えなくなってしまったわたしに、サンジくんは続けた。


「だけど、先生。おれは、この、恋の病を治すことを諦めねぇ。……先生、」
「ん?」


「おれが卒業してここの生徒じゃなくなったら、この、恋の病を治してほしい。……先生に。……それの時までおれ、頑張るから」


切なげに笑った健気な見習い紳士に、不覚にも胸が高鳴った。

いつかこの事実を、紳士となったあなたに伝えられる日が来るのかもしれない。

知らずそれを望み出したわたしが、確かにここにいる。



キケンな、関係。


fin

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