Book・Clap

□雪見酒
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雪見酒。



ゾロのそんな言葉につられ、夜更けの甲板へ足を運んだ。



うっすら雪化粧の船は、すっかり晴れた夜空に鎮座する月に照らされてやたらと美しく、

隣で瓶から直に酒を呷っては悪そうな眼でわたしを見下ろして、
口端を持ち上げて。

無性に挑発的だ。



しばらくしてゾロの手を離れた酒瓶は鈍い音を立てて転がり、
足元の純白は零れたアルコールに溶かされていく。


だから頑なに酒だけを抱いていた逞しい腕は、次にわたしを抱きしめるだけの腕となった。




いつもよりほんの少し低い体温に



「ゾロ、…愛してる」



伝えるのは儚い雪のような言葉。



ゾロの腕の力が心なしか強くなり、




「……、おれもだ」



伝わってきたのは揺るぎない月明かりのような囁き。





潮騒が心地好い。



夜明けは遠い。




fin

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