Book・Z V

□位置
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わたしは、その三連ピアスになりたい。


そのピアスになったなら、いつもあなたの身体と交じり合い、いつもあなたの体温を感じていられる。

同じ目線で、同じ世界を見詰めていられる。


「あんだ、じっと耳ばっか見て」
「……ピアスが、ね、」


「あ?」
「羨ましくなって」


「……ロクに消毒もされねぇこれが、か?」
「……」



……なるべく清潔でいたいわたしは、その刀になりたい。

その刀のうちどれかひとつになれたなら、あなたの傍らいつも寄り添って、あなたの野望を、信念を一心に受けて。

何処でも、何時でもあなたの人生の一部になっていられる。


「次はどうした」
「刀……」


「刀がどうしたんだ」
「……わたしが刀になったら、どうなるのかなぁって」


「やってみるか?」
「え?」


「ちょっと待て。……まずは名前を考えてやる。……そうだな、名刀ミサ嵐。姿勢は崩すなよ」
「……」



……ウソップの二の舞にはなりたくないわたしは、そのお酒になりたい。

そのお酒になれたなら、あなたはわたしを幾度と無く欲し、その度にあなたのキスを味わえる。

あの笑顔をもっと間近で見ていたい。

わたしがお酒なら、酷く酩酊させられるのに。


「ミサも呑むか」
「えっ……あ、うん。ありがとう」


「……こうやってのんびり呑む酒は旨ぇ」
「うん」


「……隣にミサがいて、抱きしめりゃあったけぇ。こうやって、」
「ん」


「……キスすりゃ耳まで真っ赤」
「……もう」


「こんなに惚れた女が同じ船の海賊なんてな。……なぁ、」
「……っ」


押し倒された視界で真っ直ぐに見るあなたの顔。


微かに揺れたピアス。
視界の隅、壁に立て掛けられた三本刀。
床に零れたお酒。

ゾロの体温を、わたしの体温を以て感じている、わたし。



子どものように欲しがったものは、既にわたしの手の中。


まだ望んでいいのなら、ゾロとわたし、出来るだけ長く長く、


「……ミサ、」
「ゾロ、」


後に続く愛おしみの言葉を。



fin
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