Book・Z V
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わたしは、その三連ピアスになりたい。
そのピアスになったなら、いつもあなたの身体と交じり合い、いつもあなたの体温を感じていられる。
同じ目線で、同じ世界を見詰めていられる。
「あんだ、じっと耳ばっか見て」
「……ピアスが、ね、」
「あ?」
「羨ましくなって」
「……ロクに消毒もされねぇこれが、か?」
「……」
……なるべく清潔でいたいわたしは、その刀になりたい。
その刀のうちどれかひとつになれたなら、あなたの傍らいつも寄り添って、あなたの野望を、信念を一心に受けて。
何処でも、何時でもあなたの人生の一部になっていられる。
「次はどうした」
「刀……」
「刀がどうしたんだ」
「……わたしが刀になったら、どうなるのかなぁって」
「やってみるか?」
「え?」
「ちょっと待て。……まずは名前を考えてやる。……そうだな、名刀ミサ嵐。姿勢は崩すなよ」
「……」
……ウソップの二の舞にはなりたくないわたしは、そのお酒になりたい。
そのお酒になれたなら、あなたはわたしを幾度と無く欲し、その度にあなたのキスを味わえる。
あの笑顔をもっと間近で見ていたい。
わたしがお酒なら、酷く酩酊させられるのに。
「ミサも呑むか」
「えっ……あ、うん。ありがとう」
「……こうやってのんびり呑む酒は旨ぇ」
「うん」
「……隣にミサがいて、抱きしめりゃあったけぇ。こうやって、」
「ん」
「……キスすりゃ耳まで真っ赤」
「……もう」
「こんなに惚れた女が同じ船の海賊なんてな。……なぁ、」
「……っ」
押し倒された視界で真っ直ぐに見るあなたの顔。
微かに揺れたピアス。
視界の隅、壁に立て掛けられた三本刀。
床に零れたお酒。
ゾロの体温を、わたしの体温を以て感じている、わたし。
子どものように欲しがったものは、既にわたしの手の中。
まだ望んでいいのなら、ゾロとわたし、出来るだけ長く長く、
「……ミサ、」
「ゾロ、」
後に続く愛おしみの言葉を。
fin