Book・Z V

□こもりねつ
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何となく身体が火照って落ち着かない。


腰を据えて読書しようとしても、のんびりお茶を飲もうとしても、心はわたしの中に留まってはくれない。

持て余す程の熱っぽい思考の行き先は、何度試してもゾロだった。

そして、ゾロの手つきや眼や声や色々を思い描く時、決まって腰や腹の下にじんわりとした官能を感じた。



そんな調子だったから、何日か振りに二人きりになった途端の、ついさっき、


「ねぇ、……抱いて?」


という言葉が、考えるより先に口をついた。

それを聞いて少し眼を丸くしたゾロは、すぐに不敵な笑みを浮かべてこう言った。


「言われなくても、そのつもりだ。……どこで、んな煽り文句覚えてきやがった」


早急に胸元へ滑り込むゾロの手、指。

思わず息をつくその愛撫は少し強引で、とても優しい。が、急速に熱くなる芯がそれを満足としない。

足りない、と頭の中のわたしが言う。
はやく、と自分の声がする。


「……ゾロ」
「どうした」


「今日は……、いいから、」
「ん?」


「……今すぐ、欲しい」
「わかった。……わかったから、もうこれ以上煽んな」


余裕のなさそうな表情で、手早く脱がされた下着。

疼く身体の中心に、望んだ通りゾロ自身があてがわれて、模糊とした快楽が頭を掠めた。

そしてわたしの中にゾロが入った瞬間、きん、とした確かな快感がわたしの全てを支配する。


「……あっ、ん……、ぞろ」
「ミサ」


「……きもち、いっ」
「……っ、これ以上煽んなって言っただろうが。……泣いたって、もう止められねぇからな」


腰を打ち付けられる度、熱に浮される。

酷くぎらついた眼に快い目眩。

重なる指先は熱くも冷たくもなく、ただひたすらに感覚を刺激する。


粘膜は触れ合う度に熱を高めていくから、既に快感に束縛された身体は言うことを聞かない。


嬌声の中、わたしの眼から不意に涙が零れて落ちる。
理由のない涙。本能的な、水分。


舐め取られたそれは一体どんな味がするのだろうか。
きっと酷く感覚的な、というところで巡らせた思いは、ぷつりと止まった。


間もなくの絶頂を予期して。


より込み上げる何かに、一層掻き抱いて、爪を立てて、ゾロと自分の息遣いを耳に張り付けて、唇を重ねて。


ゾロにだけ鋭敏な身体で、もう昇りつめるだけ。


fin
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