Book・Z V

□きっかけ
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おやつの時間。


アイスクリームを食べるゾロを眺めていたら。


健全なこの時間には相応しくない昨晩が、自分では止められない速度で思い出されていく。


わたしの名前を呼ぶ唇、肌を這う舌と指。
どうしようもない程欲を煽る水音、体温、意地悪な言葉。


思いを巡らせていたことに身体が反応してきたのが分かる。

思考はぼんやりとしていくのに、芯が火照っていくような。



その時、ゾロと目があった。

ゾロはわたしを見詰めたまま薄く笑うとアイスクリームを流し込んで、



わたしの身体を掬ってダイニングを飛び出した。



どさり、と降ろされたのは展望室の硬い床。

降ろされるなり縫い止められた両手と、怪しげに笑う瞳。


「ミサ、抱かれてぇのか」
「え……」


「あんな眼で見やがって。あのまま抱いちまおうかと思ったぜ」
「そんな、」


言いかけた言葉は、まだ微かに冷たい口内へと消えた。

甘い舌を絡ませた音が聴覚を刺激し始める。

不意に、す、と離れた唇。繋がれた銀の糸が視覚を刺激する。


「……欲しいか。おれの」
「……っ」


ぐっ、と腰を寄せられてゾロの高まった欲を知る。


「どうなんだ、ミサ」


眉間に皺を寄せ、切なげにそう囁かれれば、


「……欲しい」


右足の膝を立て、更に深く腰を寄せる。


ゾロの瞳に一層強く情欲の光。
わたしの欲もきっと、映し出されているのだろう。


再び舌で触れた口内は、熱くて仕方なかった。



fin
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