Book・Z V
□黄昏れ
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「――もう終わりにしましょう、わたしたち」
「……だな。こんな関係、終わらせるに越したことはねぇ」
錆びついた鉄のような空。
垣間見える陽は、今日の役目を終えようとしている。
「じゃあ、これっきり」
「あぁ。これっきり、だ」
言い終わらないうち、耐え兼ねたかのようにゾロはミサを抱きしめた。
ゾロの腕の中にすっかり収まったミサが呟く。
「……ゾロ、」
「……おう」
「もう、終わらせて」
「あぁ。分かってる。……ミサ、」
「……ん」
「……お前に惚れてる。付き合ってくれ」
ゾロの手がミサの頬に添って、どちらともなくまぶたを閉じて。
ゆっくり、ゆっくりと近づくふたりの唇。
このキスでふたりは、各々の片恋に別れを告げる。
そして、このキスの終わりにふたりが目にするのは、その瞬間から恋人と呼べる愛しい人の姿。
一番星がゆるりと頭をもたげた。
fin