Book・Z V

□獣の独白
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海賊、人斬り。


おれの生き方は殺生を避けない。

初めて人を斬ったのはいつだったか。
そんなことは忘れたが、その時手に残った人肉や骨の感触はまだ覚えている。

そして、その後の高ぶりは何人斬っても変わらねぇ。




今日も気が付けば、斬り尽くしていた。


それでもおれの血肉は未だ沸騰しそうな程熱く、戦闘最中の冷徹な思考も身体の高ぶりに覆い尽くされていく。


刀を鞘に収めても、屍を踏み越えても、仲間の言葉に相槌を打っても。

それはいつだって鎮まらねぇ。



「おい、ミサ、」
「……っ、」


そのことを壁に両手を押し付けられたおれの女は知っているだろう。


衝動と力に任せたキスなんて生優しいもんじゃねぇ何かをされても、黙って全てを受け入れているミサは。



首筋に噛み付いて、邪魔な布を取り去って、痛ぇくらいの熱を押し込んでも、


「……、ぞ、ろ……っ」


それでも健気におれを呼ぶミサが。

大事で仕方ねぇのに、こんな時はいつだってミサを壊しちまいそうだ。




だが、

急き立つどろどろした欲望の中にあっても本当に壊せねぇのは、


どうしようもなく、


「ミサ、」


てめぇに惚れてるからだ。




なけなしの理性は、優しい唇を落とせと命じる。

人間と獣の間をさ迷い始めたおれは、無防備な喉頸を甘噛みした。


fin
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