あんだー

□survives
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「一緒に死んでくれますか?」

〈いよいよ残りはお2人!自分が死ぬか、相手が死ぬか…心して戦ってください!〉


陽気な声のアナウンスと、長太郎の声は、僅差で長太郎の方が早かった。
俺もそう思ってた。
殺し合うくらいなら一緒に死のう、と。

だがアナウンスの声を聞いたとたん俺のそんなのんきな考えはふっとんだ。

俺の武器は、銃。

残り、2人。
俺と、長太郎。

ここで生き残ったほうが普段の生活に帰れる。

家族に会える。成長して、高校にも入って、社会人になって結婚だってできる。

そんな当たり前で幸せなことをしないでこんなところで死ぬなんてひどい話だ。
心残りになるだろ。
中学なんつー狭いところでたまたま会った男なんかと付き合って終わる人生なんてさ。
だが、人殺しになんてなっちまったらきっとずっと後悔する。

だから手を汚さずに、元の生活に戻るのが1番いい。



「宍戸さん?聞いてますか」

「あぁ。一緒に死んでくれ、だろ。」
「はい。」

長太郎のまっすぐな目に、本心なんだろうな、と思った。

そんな長太郎の本心をふみにじって悪い気はするがもう俺はきめたんだ。
ここで生きて帰って元の生活を送っている幸せを思い描いた。
思い描いて再度思った。

あぁ、これが俺の願いなんだ、と。


「長太郎、お前の武器、なんだった?」
「俺は銃です。宍戸さんも銃、でしたよね」

「よし。お互い銃でよかったな。一発だ。」

「ですね。俺もそう思っていました。どうします?一斉に撃ちあいましょうか。」

いつも通りの優しい優しい声で言った長太郎に、俺は言っていない。

「長太郎の銃の弾、もう残っていない」と。

つまり今ある銃の弾は1つ。
俺の銃だけ。

だからはずしたらお終いだ。
長太郎にも「一緒に死のうって言ったじゃないですか」と責められるだろう。
一発で急所にあてないと。


「いや長太郎、男なら自分でやろうぜ」

俺がいうと長太郎は少しだけ考えてからうなずいた。

「宍戸さんの考えに従います。そうしましょう。」

そういって長太郎は自分のこめかみに銃をかまえた。
続けて俺もかまえる。

「じゃ、いくぜ。いいか?」

「待って、宍戸さん」

そういって長太郎はこめかみに銃をあてたまま、俺を見つめて言う。

「こんなときに言うのもなんですけど・・俺、宍戸さんが恋愛感情で好きです。最後にキスしていいですか?」

「は?キス?」

「宍戸さんがどうしても嫌だっていうならやめますけど」

驚いた。
両想いなんてしったら俺の決心が歪んでしまう。
生き残る。生き残って、元の生活へ戻させる。

「・・・最後だしいいぜ。早くしろ、よ」

俺の言葉と同時に俺の視界が長太郎でいっぱいになった。
その幸せをかみしめながら俺は構えていた銃を撃った。


心残りになるだろ?
中学なんて狭いところで出会ったこんな小汚い男の俺なんかと付き合って終わる人生なんてさ。

「宍戸さん・・?」




大好きなんだ、長太郎


END

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