短編
□限界まで
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今日も長距離移動したテイト達は、司教特権を駆使しタダで宿屋に泊まっていた。
「―――むかつく」
「は?」
まるで、『今日は雨で嫌だなー』と何気ない一言のようにテイトの口から出た言葉は、まっすぐにフラウへと向かっていた。
「俺も結構・・・というよりかなり筋トレしてきたけどさ、フラウみたいに筋肉がしっかり付いてないんだよなぁ・・・」
なるほど。だからさっきから俺の肉体美を眺めていた訳か。
風呂上がりなため、今のフラウは上半身の肉体を惜しげもなくさらしている。長身に見合ったがっしりした体つき。流れるような筋肉は付きすぎでもなく、むしろちょうどいいくらいの量だ。
花街に行けば、綺麗なおねーさん達はフラウの逞しい体つきに惹かれて寄ってくるが、まさかテイトもそうなりたいのだろうか?
「なあ、フラウは俺くらいの時もそうだったのか?」
「いや・・・?たぶんお前と同じでまだ筋肉とか全然付いてなかったはずだぜ?」
そういわれてもテイトは信じていないようで、ジト目でフラウの身体を眺める。
フラウがテイトの身体を(舐めるように)眺める事はあっても、テイトがフラウの身体を視ることはあまりない。それでも歳相当の子供らしいテイトの好奇心なので一応そっとしておいておく。
テイトの興味はフラウの筋肉からミカゲの身体に移ったようで、テイトは小さな身体を確かめるように触っている。
「ミカゲは足太いけどこれ全部筋肉かな?」
「人とドラゴンじゃ筋肉の付き方全く違うって」
「あ、でもミカゲは筋肉全くなかったよな」
きっと生前のミカゲのことだろう。
テイトは懐かしそうに目を細めてピンクのドラゴンを見つめる。