NARUTO

□変わるものと変わらないもの
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「てやぁっ!!」
「っ!!」
「おらぁぁっ!」
「っにゃろぅっ」
第三演習場に、二人の少年の声が響いた。
「おらおらおらっ!!!」
やけに気合の入った掛け声を発するのがうずまきナルトであり、
「・・・っ・・・なにをっ!」
あくまで冷静に、声を発するのがうちはサスケである。
2人は今まさに組み手の最中で、どちらが優勢だとか、そんなことはなく、どっちもどっち、譲らない状況であった。打ち合い、退けあい、場所を変え延々とそれを繰り広げて行くと
「うぉ・・・・?」
「あっ・・・・?」
突然、サスケが声をあげる。それに釣られナルトも声をあげた。
ちょうど相手を退け、距離を置いたときだった。そう遠くないところからサスケの声が聞こえる。
なんだ?
と思うより早く、どさり、という、何かが倒れる音がした。
「サスケ・・・?」
その声と、音と、が気になり、先ほどまで組み手をしていたが、いきなり姿の見えなくなった相手の名を呼んだ。
返事は、ない
「オイサスケっ」
さすがに心配になってナルトは声の方へ走った。
すると、サスケはいた。
そこで、足首を押さえてうずくまっていた。
「オイっ!大丈夫かってば?!」
ナルトが駆け寄ると、サスケはそれに気づき、顔を上げ、「別に」だとか「何でもない」だとか言って立ち上がろうとする。
だがしかし
「っ!!!!」
直後痛みに顔をしかめて、またその場でナルトが来た時と同じように足を押さえ、うずくまる。
「ぜんぜん大丈夫じゃねェじゃねーかっ」
「・・・うるさい」
そういいナルトを睨むサスケだったが、ナルトはそんなこと気にする様子もなく、サスケに近寄りサスケが押さえていたほうの足首を見た。
「あーあ・・・腫れてるってば・・・ひねっちまったんじゃねーのかってばよ?」
「・・・・」
ナルトの言葉を、サスケはむすっとした表情で聞く。
「ほら、ちょっと靴脱げってば」
「気にすんな。問題ねェから」
「何いってんだってばよ!かっこつけてばっかいんな馬鹿っ」
はぐらかそうとするサスケに、ナルトは一喝した。
サスケは仕方なく黙ってされるがままにされた。

先ほど、ナルトはああ言ったが、正直な話、ナルトはこの状況が嬉しくて仕方がなかった。
普段は格好つけてばかりのサスケが、今日は組み手の途中になんかしらして、足首をひねって、痛がっている。そんなサスケの間抜けな姿が見れたのだから。
それがナルトにとって嬉しくて仕方がなかった。
しばらくして、
「よし、応急処置は終了だってばよ」
そう言ってナルトは満足そうに笑い、包帯を巻いたところを軽く叩いた。
「っ!!!」
走った痛みに思わず顔をしかめる。
そんなサスケを見て、
「うおっ!!ごめんってばサスケ、ついっ」
ナルトは珍しく素直に謝った。そして
「さて、さっさと冷やさないと悪化するからな、帰ろうってば」
そうサスケに笑顔で話しかけるのだった。
「あー・・・」
サスケはそう空返事はするものの、先ほど、自分は歩くことはおろか、立ち上がることすらできないと分かっているのだ。
それにナルトも気づいたのか、
「あ・・・そっか、歩けねぇな・・・じゃぁ・・・そうだな」
そう言ってナルトはサスケに向けて背を差し出した。
「・・・・何のつもりだ」
「背中、乗れってばよ。おぶってってやるから」
「なっ・・・誰がそんな恥ずかしい真似するかっ」
「はず・・・恥ずかしいって何だってばよ!人の好意をっ!!」
「好意だろうがなんだろうが、お前なんぞに背負ってもらうなんて恥以外の何者でもねェ!」
「んだっとこのやろぉぉぉぉ」
せっかくいい雰囲気になったのに、やはり喧嘩をするのはもはや分かりきったことなのだろう。
だがしかし、
「ん、」
ナルトのその声で喧嘩は中断される。
「・・・今度は何だよ」
「だーから、分かったから、せめて肩貸してやるってばよ。それでいいってば?」
そういうナルトを見て、サスケは「仕方ねェ」と差し出された手を取るのだった。

ナルトに半体重をまかせながら、サスケは思うのだった。
この状況、おぶられていない、ということを除けばあのときと同じなのだ。
数年前、まだサスケ自身幼かった頃、大好きな兄という存在が隣にいたとき。
あの時も、無茶をして足首をひねり、兄に心配され、足首に包帯巻かれておぶられて帰った。
今思うとそんなこと、消えたに等しい過去にすぎないのだが、なんだかひどく懐かしく思え、思わず笑みがこぼれてしまった。
「なんだってばよ、いきなり笑い出して」
「なんでもねぇよきにすんな。ウスラトンカチ」
たまにはこんなのも悪くないかも
なんてサスケは思ってしまった
ただあの時と変わったことがあるとしたら、今肩を貸されて歩いているということと、相手に対する態度と、


足首の包帯の巻き方が若干汚い、ということだけ

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