NARUTO

□較差
1ページ/2ページ



―― イタチに勝った ――



―― イタチが




    死んだ ―――




長年思い続けてきた野望だった。復讐。まだ幼い頃に誓ったことだった。

それが、叶った。




なのに目が覚めると、自分が見ていた現実と違うものを見ることになった。

否、見させられた。

世界は自分が思っていた方と反対に回っていた。

恨むべき兄が信頼すべき人で、長年頼っていた、信じていた木ノ葉の連中が、憎むべき相手だった。

受け入れたくなかった。

しかしそれが事実だった。すべての真実だった。




“利用されている”。そんなこと、最初から気づいていた。

しかし許せなかった。木ノ葉の者達がどうしようもなく憎くなった。

誰よりも、何よりも自分を思い、自分を大切にしてくれた兄。

その兄を最後まで苦しませてきたのは木ノ葉の連中だ。奴らみたいな存在がいなければ、兄は苦しむことがなかった。そしてまた自分も、こんなに苦しい思いをしなくてすんだのに。

ここまで人の人生をめちゃくちゃにしたにも関わらず、ぬくぬくと平和に過ごしている木ノ葉が信じられなかった。だから誓った。




―― 木ノ葉を潰す  と







まだ幼い頃、忍者学校に行ってる兄の帰りが待ち遠しかった。

早く帰って来てほしかった。一緒に遊んでほしかった。

玄関の扉が開けられて聞きなれた声が聞こえると、全力でそこへ走って向かった。

そして思ったとおりの人物がいると、即抱きついて、言う。





『ねぇねぇ兄さん、遊ぼうよ!何して遊ぶ?隠れんぼ?鬼ごっこ?』





早口でそういうと、困った顔をしながらも笑いながら





『何でもいいよ、サスケ。お前の好きな事で遊ぼう』





そう言ってくれる。それが嬉しくて調子に乗ると、母親に怒られるのだが、そんな母親をイタチは何とかして言いくるめて、一緒に遊んでくれたのだ。

兄が、イタチが大好きだった。本当に、本当に大好きだった。




でも裏切られた。イタチは家族を、一族の皆を殺した。

自分は一人にさせられた。

イタチを恨んだ。




何で殺したの

何で一人にしたの

何で自分も殺さなかったの

何で生かしたの




だけど知った。殺さなかったんじゃない。殺せなかったんだ。

その言葉を聞いた途端、今までの疑問がすべてふっと軽くなるのが分かった。

あの時泣いていた・・・イタチが泣いていた意味。




分かった。分かったんだ。

恨みを果たそう。




“復讐なんてやめとけ”



ある男の言葉がよぎった。たしかに、復讐した結果がこれだ。だがしかし。

違う。復讐じゃない。

兄の代わりをするだけである。兄がホントはやりたかったであろうことを代わりに果たすんだ。

後悔なんて、しない

許せないから。




また思い出す過去。あのときの優しい兄はもうこの世に存在しない。

だけど、真実を知る前よりも、優しい兄と幼い自分がいたときよりも、“兄”という存在はかけがえのないものになっていた。

そうだ。今までとは違って、また昔のように呼べるはずだ。

その意味は今までよりもより強く、重い意味を持つような気がした。






「兄さん・・・・・・。まずは一人目だ・・・」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ