NARUTO
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―― イタチに勝った ――
―― イタチが
死んだ ―――
長年思い続けてきた野望だった。復讐。まだ幼い頃に誓ったことだった。
それが、叶った。
なのに目が覚めると、自分が見ていた現実と違うものを見ることになった。
否、見させられた。
世界は自分が思っていた方と反対に回っていた。
恨むべき兄が信頼すべき人で、長年頼っていた、信じていた木ノ葉の連中が、憎むべき相手だった。
受け入れたくなかった。
しかしそれが事実だった。すべての真実だった。
“利用されている”。そんなこと、最初から気づいていた。
しかし許せなかった。木ノ葉の者達がどうしようもなく憎くなった。
誰よりも、何よりも自分を思い、自分を大切にしてくれた兄。
その兄を最後まで苦しませてきたのは木ノ葉の連中だ。奴らみたいな存在がいなければ、兄は苦しむことがなかった。そしてまた自分も、こんなに苦しい思いをしなくてすんだのに。
ここまで人の人生をめちゃくちゃにしたにも関わらず、ぬくぬくと平和に過ごしている木ノ葉が信じられなかった。だから誓った。
―― 木ノ葉を潰す と
まだ幼い頃、忍者学校に行ってる兄の帰りが待ち遠しかった。
早く帰って来てほしかった。一緒に遊んでほしかった。
玄関の扉が開けられて聞きなれた声が聞こえると、全力でそこへ走って向かった。
そして思ったとおりの人物がいると、即抱きついて、言う。
『ねぇねぇ兄さん、遊ぼうよ!何して遊ぶ?隠れんぼ?鬼ごっこ?』
早口でそういうと、困った顔をしながらも笑いながら
『何でもいいよ、サスケ。お前の好きな事で遊ぼう』
そう言ってくれる。それが嬉しくて調子に乗ると、母親に怒られるのだが、そんな母親をイタチは何とかして言いくるめて、一緒に遊んでくれたのだ。
兄が、イタチが大好きだった。本当に、本当に大好きだった。
でも裏切られた。イタチは家族を、一族の皆を殺した。
自分は一人にさせられた。
イタチを恨んだ。
何で殺したの
何で一人にしたの
何で自分も殺さなかったの
何で生かしたの
だけど知った。殺さなかったんじゃない。殺せなかったんだ。
その言葉を聞いた途端、今までの疑問がすべてふっと軽くなるのが分かった。
あの時泣いていた・・・イタチが泣いていた意味。
分かった。分かったんだ。
恨みを果たそう。
“復讐なんてやめとけ”
ある男の言葉がよぎった。たしかに、復讐した結果がこれだ。だがしかし。
違う。復讐じゃない。
兄の代わりをするだけである。兄がホントはやりたかったであろうことを代わりに果たすんだ。
後悔なんて、しない
許せないから。
また思い出す過去。あのときの優しい兄はもうこの世に存在しない。
だけど、真実を知る前よりも、優しい兄と幼い自分がいたときよりも、“兄”という存在はかけがえのないものになっていた。
そうだ。今までとは違って、また昔のように呼べるはずだ。
その意味は今までよりもより強く、重い意味を持つような気がした。
「兄さん・・・・・・。まずは一人目だ・・・」