万高真ん中バースデー2010
□では今回は、
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Aござる禁止
何時もと違うと違和感しかない。
「万斉先輩」
「また子殿。どうした」
「―――?!」
個人の呼び方は何時も通りなのに、語尾が違う。
それだけで別人と話しているような感覚に襲われた。
「どうした?」
「…な、何でもないッス!!」
「あ、また子殿?!」
ジリジリと後退りしたまた子は急にクルリと万斉に背を向けて、だっとの如くその場から走り去った。
残された万斉はその場から動けず呆然と小さくなっていく背中を見つめていた。
◇◆◇◆◇
「晋助様晋助様晋助様ぁ!!!」
バンッ!!
「なんだよ、うるせぇな」
一部の人たちに陰で呼ばれているあだ名の如く亥の様に突っ走ってまた子は高杉の部屋に転がり込んだ。
迎えた高杉は眉を少し顰めただけ。
「だだだって晋助様っ!!」
「だから、何だよ」
「ば、ばば万斉先輩がっ!!」
「あ?万斉が何だってんだ?」
へたり込んだまた子の側に移動して、高杉は問う。
「万斉先輩がおかしいんスよ」
「あいつがおかしいのは何時もの事じゃねぇか」
「そうなんスけど、違うんスよ!!」
「………?」
何がどう違うのか。首を傾げる代わりに高杉は煙菅に口を付けた。
「万斉先輩がおかしいんス」
「それは聞いた」
大きく息を吐いて呼吸を整えたまた子が改めて同じ事を口にする。
「話し方が…変なんスよ」
「あいつぁ、変なのがデフォルトだろ?」
「そうじゃなくって!!」
どうにもさっきから会話が噛み合わない。
「ござるって言わないんスよ!!」
「………ああ」
また子の中では一大事だったのに、高杉の反応は薄い。
「…晋助様、驚かないんスか?」
「表の仕事してる時はいっつもじゃねぇか」
「でも、今はこっちに居るんスよ?それなのに…」
また子の言葉にニヤリと笑う高杉。これは、もしかして…
「晋助様。理由、知ってるんスか?」
「ゲーム中だ」
一体何の?
「……ゲーム?」
「俺が良いって言うまであいつはずっとああだ」
「そ、そんな…」
高杉の言葉にまた子は愕然とする。
「しししし晋助様ぁぁ…早く解禁して欲しいッスよぉ…!!」
「おわっ、何だよ?」
涙目で縋ってきたまた子に高杉は驚いて目をしばたかせた。
「だ、だって、標準語の万斉先輩…」
うるうる、と更にまた子の目がうるんだ。
「…また子、お前、」
「標準語の万斉先輩キモチワルイッス!!!」
「………は?」
「うあああぁぁ…思い出しただけで鳥肌が立つッスよ。何スかあれ?何なんスか?マジキモイ!!」
自分を抱きしめる様に腕を回してぶるぶると首を振るまた子を見て高杉はホッと息を吐いた。
思わぬ勘違いをしそうになって、知らず息を止めてしまっていた…
「ク、ククク…」
「晋助様?」
急に笑いはじめた高杉にまた子は不思議そうに首を傾げる。
「わりぃな、また子」
「え?」
「俺はまだ止めるつもりはねぇよ」
「ええぇえ?!」
悲壮な声をあげるまた子に高杉は更に肩を振るわせて笑った。
「二人してどうした?」
「ギャー!!出たぁぁぁ!!」
「はっ?!」
突然悲鳴をあげられた万斉はその場で固まり、
「アハハハ…」
高杉はとうとう腹を抱えて笑いはじめた。