万高真ん中バースデー2010
□では今回は、
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B接近禁止
ある日突然宣言された。
「半径2m以内に近付くな」
理由を聞いても答えは貰えず、ただ「近付くな」と繰り返されるだけ。
それから数日後。
「………河上?何をしているんだい?」
「……にぞ…どの」
自室の隅っこでキノコを生やして膝を抱える万斉を似蔵が見つけた。
「ゲー、とうとうキノコ生やしたんスか?」
「昨日は夢遊病者の様にフラフラしてましたね」
似蔵の話を聞いて、また子は思いっきり嫌な声をあげ、武市は大きなため息を吐いた。
「ケンカでもしたんですかねぇ?」
「どうなんだろうねぇ。そうは感じなかったんだけど」
「そうッスね。晋助様もいつも通りだったッス」
『ううーん…』
理由も答えも見付からず、三人は首を傾げるしかなかった。
◆◇◆◇◆
「おい」
「……しんすけ…」
変わらず部屋の隅っこで、じめっとキノコと仲良くしてると声をかけられた。ギギギ…と油の切れた機械の様に首を巡らせて、声の主を呼ぶ。
「っとに鬱陶しいな。オメェは」
そう言いながらも高杉の口元は愉しそうに歪んでいる。
「晋助」
「ざまぁねぇな、万斉」
しゃがんだ高杉。万斉から2m以内。
「――っつ」
言いつけ通りに離れようとして、ガツッと腕を掴まれた。
「誰が離れて良いっつった?」
「だが…」
「俺は、お前から俺に2m以内に近付くのは禁止っつったんだよ」
「……?」
どうやら万斉は高杉禁断症状で、脳の働きがだいぶ鈍くなっているらしい。
「俺を避けろなんて、一言も言っちゃいねぇんだがな」
ククク…と喉で笑って、高杉は身を屈める。
「―んっ」
押し当てられた唇にめまいがする。
「しん…す、け…」
「ちったぁ良い薬になったろ」
言った高杉に、万斉は漸く禁止令が解かれたことに気付いた。
「晋助っ!!」
「んな声で呼ばなくたって聞こえてらぁ」
背中に回された腕に高杉はそっと目を閉じた。
そして。
「あ?万斉が腐ってた理由?」
「そうッス。回復した先輩もウザイけど、腐ってた先輩もウザかったッス」
回復した万斉が前より一層ウザくて、また子は高杉に理由を聞いていた。
「あぁ…なんだ、その……」
「?」
珍しく歯切れの悪い高杉。
「…が、…っつってたから…」
「は?」
ボソボソと言われてよく聞き取れなかった。
「銀時があんまりベタベタしてっと早々に愛想尽かされるっつってたんだよ!!」
「……つまり、ちょっと距離を置こう。と」
「そうだ」
「……っ、白もぢゃめっ!!」
余計な入れ知恵をしてくれたおかげで、余計な心配をしてしまったじゃないか。
また子は次に銀時が遊びに来たらタマを蹴り上げてやる。と決心した。