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□笑顔
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小学校の入学式という節目の年

今まで『性格に難あり』とのレッテルを貼られ、仲間に入れてもらえなかった我が息子を心配するのは当たり前のこと

友達100人なんてそんな無茶は言わない

ただ、1人

1人でもいいからあの子のことを理解して受け止めてくれる

そんな友達ができて欲しい





―バッチーン
大きな音が鳴り振り向いてみると
―ドカッ
―バシッ
天使のような容姿をした男の子がこれからクラスメートになる男の子をしばき倒していた。
殴られた子の親が喚くもその子は正論で黙らせた。
(すごい子が居るのね…うちの子はやっていけるのかしら)
そう不安になるのは決して私だけではないはず。

そして、その子は周りに眼を飛ばすと、ふと何を思ったのか1人の子をじっと見つめ歩き出した。



そこからは、もうビックリの繰り返しだった。
歩き出した子はいきなりその子のところへ行き、お互いに自己紹介をしだした。
そこに我が子が「かっこいいねぇ」「ヒーローみたい」と言いながらその2人の元に行き、3人で何かを話し出した。
と思うといきなりこちらを向いてとろけるような笑顔で2人を連れて歩いて来て
「おかあさん、おかあさん、ツッくんの子分2ごうにしてもらっちゃったぁ」
見たこともないような嬉しそうな笑顔でこの発言。
だから、つい、
「そう、よかったわねぇ…」
何か引っかかる単語があったがスルーしてしまった。
「うん。テッちゃんが1ごうで、おれが2ごう」
でも、もう一度繰り返してくれた言葉に違和感を覚える。
(あれ?…お友達じゃなくて子分なの?)
そんなことも思ったがとっても嬉しそうにしている我が子に、まぁ、いっかとその子分1号さんと親分さん?に挨拶をしようと思いその2人を見て、固まってしまった。

天使のような子は近くで見るとますます綺麗で可愛くて…
そしてもう1人は、先ほどは後ろ姿しか見えていなかったから分からなかったが、とても深い、不思議な感じのする蒼い瞳をしていた。
動かなくなってしまった私に1人は眉をひそめ、1人は俯いてしまった。
(見つめたまま固まったら不審がるわよね。…えっと)
「龍ちゃんのお友達になってくれてありがとう。…ツッくんとテッちゃん?」
お礼を言ったのは良かったが名前を知らなかったことに気が付き尋ねようとすると
「…すぎもと、てつしです」
「れんじょうつばさ」
何を思ったのか分かったらしく、聞かずとも答えてくれた。



その後、哲史君と翼君の保護者が来て、3人が教室に案内されている間、色々と話をさせてもらった。
話を聞いているとどうやら龍ちゃんだけでなく、哲史君、翼君も始めて友達を持ったみたいだ。
「類は友を呼ぶ」とは言うがまさかここまでとは…



あの日から、あの子はとっても生き生きと楽しそうに学校に行き、何度も家に2人を連れてきた。
我が子の笑顔を見て、2人に出会えた奇跡を感謝した。






くされ縁初の小説です。全体でも2本目…
一発目がな・ぜ・か龍母視点↓↓
本当は、哲史のお婆ちゃん視点で書きたかったんです。
でも、どう表現したらいいのか分からなくて。
いつか、書けるといいな




 

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