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□一目惚れ
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それはまだ俺がアカデミーに通い始めた頃。
じっちゃんに貰った植物を家に運んでいるときだった。
いきなり、里人が俺の持っている植木鉢を叩き落としていったのだ。

今思えば、それだけですんだことすら奇跡だったかもしれないが、その時の俺はまだ『皆に俺を認めさせる』という目標すら持っていない子供だったから、結構堪えた。
落とされた植木鉢が割れなかったのは幸いだが植物はひっくり返り悲惨なことになっていた。

唇を噛み締めて泣きたい衝動を抑えつつ、どうしようかと悩んでいると
「どうしたの?」
いきなり後ろから声をかけられた。
振り返ると、同い年位の女の子が一人こちらに向かってきていた。

「…っ!!酷い…あなたがやったの?」
ひっくり返っている植木鉢を見て問いただしてきたので、
どうせ否定しても怒られると思いつつも、必死に首を振る。
「そう…だったらいいわ。ほら、男の子でしょ泣かないの」
そう言って隣にしゃがんできた。

「泣いてないっ」
「今にも泣きそうって顔してるわよ?」
「…」
自分が今どんな顔をしているのか分かっているから反論も出来ず、俯いてしまう。
「もー、落ち込まないの。私が直してあげるから」
「えっ?」
「大丈夫。私、家が花屋なのよ。これくらいなら私でも直せるわ」

言われた言葉に顔を上げるとその子は植木鉢に植物を入れ、土を敷き詰めていた。
「ほら、これで大丈夫でしょ」
「…ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ私、お使いの途中だから」
ニコッと笑ったその子は綺麗に直った植木鉢を返すと走っていってしまった。

突然現われた子に今までにない親切を受けて、いや、最後の笑顔に見ほれて固まっていた俺は、とにかく帰路に着くことにした。

家についてしばらくした後、その子がどこの誰だか分からないことに気がついた。
次に会うときは、名前を聞こう。そんなことを思いながら、直してもらった植物の世話をすることにした。



そして、次にその子に会ったのは二年後のアカデミー入学式だった。









今度アップしようと思うナルイノの2ページ目。
イノ視点のみに変更のため、短編にアップしました。
1ページ目に合わせて作ったので、最初に

あの人には既に好きな人がいる
それ以前に俺なんかと付き合ってもらえる筈なんかない
化け物を飼ってるんだから
だから、伝えることの出来ない想いを胸にあの人の幸せを願っていよう

が付く筈でした。
短編には合わないのでカットですけどね…
だから、少し変かも…オチ無しだし。
しかも、アップしてから気がついたけど、ありえないくらいに短い

ってわけで、アップしたその日に修正しました。

少しは増えたと思うよ??
…多分…





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