プレゼント

□クラウド誕生日☆2010
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尻ポケットに入れていた携帯を。
鳴らす。


『あ、クラウド?ゴメン今行くから!』


電話の向こうからも女の声がして。
彼がいる場所とは逆の方向へ。

歩く。


「ああ、悪いけど用事入ったから今日はキャンセル。」


『は!?』


耳が痛くなるほど携帯に近く。
大きな声で。


(そんなに大きくなくたって……)


『どーしても外せない?』


後ろめたい、気持ちがあるから。

声が詰まってしまう。


『……クラウド?』


電話越しの声が。
優しく名を呼んでくれる。

が、その後ろから堪忍袋の緒が切れたかのように、
女が彼の名を甘ったるく呼ぶ。


(やめろ、そんな風に呼ぶなよ……)


「俺のことはほっといて、その子と遊んであげたらっ!」


『え、クラウ――ッ!』


ブチリと電話を切る。
そして、電源まで切ってやる。


早足で裏通りを通り抜けてゆく。

寮までの道のり。
頭の中をぐるぐるぐるぐるさせながら。

足を進める。



夢を見ても それは叶わない。
ただ一人で空回りしてしまうだけ

気づいた時にはもう部屋の中にいて。
無意識に、

涙を流している自分が、いた。


どうして?


なんて云うなら。
まずは、好きになってしまった所からだろう。

きっと好きになんかならなかったら、
こんな風に悩んだりしなかっただろう。



もしも人生を一度だけやり直せるなら。
迷うことなく、選べるだろうか?

人の夢は大きすぎて。
現実を目の当たりにして、初めてその落差に気がつく。

胸が高鳴ったり、締め付けられたり。

哀しかったり、淋しかったり、恋しかったり。

人の夢は、いつもそうだ。
そこまでして、人は手の届かない夢を追い求める。
自分でもわからない、その真意。



そんな時、
インターフォンの呼鈴が部屋中に響き渡った。


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