切なさと愛しさの間

□第一章 褒め言葉は人を笑顔にする魔法の呪文
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トントントントンッ

リズム良くまな板の上でネギを切っている私。
人数分の皿に焼き魚を乗せ、一人せっせと作りあげている。

そんな私、サリンダはなんとあの高杉晋助様率いる鬼兵隊のお世話係をしている。
船の何ともいえない揺れの中でも私は、今日も大好きなあの人の為にせっせとお仕事を頑張る。

あの人の分の皿を取り煮物を盛り付ける。
私が作った物を口にしてくれる事だけでも嬉しいことこの上ない。
ウキウキしながらよそっていたらついついよそい過ぎちゃった;
あからさまにわかるかな?考えながらふと時計を見るともう食事を運ぶ時間になってしまった。
まぁばれないよね。
私は御膳に皿を乗せ、急いで皆の分を食堂部屋へと運んだ―

―‥

「相変わらずサリンダ殿の料理は美味しいでござるな」

運んだ食事を美味しいそうに食べ、横にいる私にいつも褒め言葉をくれる万斎さん。

「う〜む、この焼き魚もいい具合で焼けてますねぇ〜」

万斎さんの隣に座りながらまたまた褒めてくれる武市さん。

「サリンダ、今度料理教えてっス!」

ニコニコしながら武市さんの向き合いに座ってるまた子さんが言う。
そしてまた子さんの隣、つまり万斎さんの向き合いに座っているのが高杉様。

「あれっ!?何か晋助様の煮物多くないっスか?」

どきっ!!

また子さん鋭いよ!
まさか気付くとは思わなかった。

「確かによく見ると多いでござるな」

万斎さんが高杉様の御膳をさりげなく覗く。

私はどうしていいかわからなくなり目線を下にした。
何だか急に恥ずかしくなってしまった。
たまたま多くなってしまったと言えば済む事。
だけど好意でやったことだと言うことは自分が1番わかっている。
いい訳したとしても私の場合ボロが出るだろう。そんな事になったら尚更私の気持ちがばれてしまう。
絶対、高杉様に私の気持ちが気付かれてしまったらまずい。
だって高杉様の中には愛だの恋だのは存在していないとわかっているから。私の気持ちなんて高杉様にとっては邪魔なもの、迷惑なだけのもの。
なら、伝えず私の中でそっとしておいた方がいい。
報われないってわかってるけど、ひそかに思っているだけなら高杉様に迷惑はかけないから。
私が高杉様のお側にいる為にはそうするしかない。

「・・・黙れ」

私が物思いに浸っていると、多くていいな〜などと騒いでたまた子さんと万斎さんに言葉を発した高杉様。
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