長い話

□02
1ページ/1ページ






深く息を吸い込み吐き出す。そんな行動を繰り返し何時間時間を無駄にしただろう。それでも一歩を踏み出せなくて少女は深いため息をはいた。学園は目の前にあるのにどうしても一歩が踏み出せない。それは目の前に見えない壁があるようで…。震える手をそっとさする。

「おーい君ーー!!」
「!!」

地面ばかり見つめていた少女に遠くから声がかけられた。勢いよく顔を上げその声を主を探す。太陽のような明るいオレンジが特徴な男の人が走りながらこちらに来る。制服を着ていない所を思うと教師、なんだろう。少女はパニックを起こしている頭で必死に考える。

「お前が転校生の子だろ?時間になっても来ないから迷子になってると思ってな〜。よかったよ見つかってさ!」
「、」
「残念ながら俺はお前の担任じゃないけどさ、この学園に来たからには俺の生徒だ!俺の名前は陽日直獅。よろしくな!」

優しい声に優しい言葉。髪色だけじゃなくて太陽そのものみたい、少女はそう思った。

「んじゃ、職員室に行くか!」

そう言って一歩近づいてくる直獅。そっと手が肩に触れた瞬間、
少女の頭にたくさんの映像が流れた。小さな少女の横にいた男が手を伸ばし手首を掴んだ。刹那グニャリと笑みが歪む――――。


「、あ、あ…っ」



“さぁ、お嬢ちゃんこっちにおいで”



「いやぁああああああぁあ!!」
「っ!」

甲高い叫び声を上げ少女は怯えるように逃げて行く。直獅も遅れて我に返り追いかけようとするが先ほどの少女の悲鳴を思い出し足を止めた。己の手を見つめ苦い表情を浮かべる。

「俺でも駄目、か…」

そう呟き少女が向かった先に歩きながら携帯を取り出した。












[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ