お題

□オオカミと純情を結んだのは、紫の糸 1
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隆志「綺麗な夕焼けだなー!」


タクミと並んで歩く、帰り道。
もう空は夕焼けに染まっていて、夕日が眩しい。

隣を歩くタクミを変に意識してしまい、隆志は平静を装いながら、内心ドキドキしていた。











タクミに告白されて、まだ一週間。

初めての恋人で、しかもそれが男。


初めてすぎてどうすればいいのかわからず、隆志は常にドキドキした状態だった。



タクミの一言一言に動揺して、真っ赤になって。
それでも、一緒に帰ったり、遊んだりするのは楽しくて心地良い。



だが、今のタクミは、少し不機嫌そうな顔をしていた。








タクミ「……ねーえ。なんか、余所余所しくない?」

隆志「そ、そうか?」

タクミ「今だってほら、微妙に距離空いてるし」



隆志とタクミの間には、遠すぎず近すぎず、といった微妙な空間がある。
まるで、友達以上恋人未満という言葉がピッタリの距離。

隆志は慌ててタクミとの距離をつめた。




隆志「わ、悪い!」

タクミ「……あーのーさ。
   俺が嫌なら、ハッキリそう言ってくれた方がいいんだけど?
   帰る方向だって一緒じゃないし、無理に俺と一緒に帰らなくてもいいんじゃない?」

隆志「違うよ!」




ハッキリした否定に安心するも、タクミの表情はまだ不機嫌。

あー、うー……とよくわからない声を出しながら、隆志は悩むように頭をかいた。



隆志「な、なんか……タクミと付き合うって、実感なくて」

タクミ「俺のこーくーはーく、信じられない?」

隆志「そうじゃねーって!
   タクミの事は、す、好きだし、信じてるよ!
   けど、その……俺、恋人出来るとか初めてだからさ。どうしていいか、わかんなくて……」





隆志の顔が、赤く染まっていく。
勿論、夕陽のせいなんかじゃない。







タクミ(つーまーり。どうしようもなくウブって事か)


彼にとって、自分は初めて。
それが、どうしようもなく嬉しくて、楽しくなる。

いつの間にか、不機嫌そうな表情は妖艶な笑みに変わっていた。


タクミ「じゃあ、こういうのも初めてって事だよねぇ?」



少し屈めば、すぐ近くなる互いの顔。



今から何をされるかわからず、顔を赤らめてぽかんとしている隆志。

そんな彼を可愛いと思いつつ、タクミは一瞬、唇にそっと口付けた。














(チュッ)










隆志「えっ、あ……」


タクミの整った顔のドアップと、唇に落とされた感触。

勿論、キスされるのなんて初めてで。
隆志は耳まで真っ赤にすると、バッとタクミから退いた。


隆志「った、たたたタクミ!い、いきなり何するんだよ!!」

タクミ「ククッ、顔真っ赤だね」

隆志「し、仕方ないだろ!初めてなんだから!!!」

タクミ「ソレ聞いて安心したよ。
   大丈夫だって。すぐ、オレ色に染めてあげるかーらーさ」





タクミは隆志の手を掴むと、早足で引っ張る。


隆志「た、タクミ!?」

タクミ「予定変更。今から俺の家においでよ。
   恋人がどういう事するのか、た〜っぷり教えてあげるからさ」

隆志「け、けど!俺、今日見たい番組があって……」

タクミ「俺の家で、一緒に見ればいいデショ?」



夕陽を背に、タクミは楽しそうに微笑む。

顔を染めたまま動揺している様子を隠せない隆志を、早く家に連れて行きたくて。
タクミは、さらに足を速めた。








   「仕方ないだろ、初めてなんだから」





(ククッ、これからどうやって可愛がってあげようかな〜)


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