月宮殿

□なんでも屋さん
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土方が足りないものを買い足しに行くのに付き合ってくれるというので、一緒に町に出た



紺の着流しに同色の羽織を着ていた



いつも制服姿しか見ていなかったから、多少見違えた



「着物のほうが好きかも…」



時音がボソッと言った



「お前に好かれてもな…」



そう言いながらも、土方は照れていたようだった



「最初に腹ごしらえしてから、買い物な」



「はい」



返事をして土方の横を歩いていった


土方の行き着けっぽい定食屋の暖簾を潜った



「いらっしゃ〜い。おや、土方の旦那。今日は彼女連れかい?」


店のオヤジが気楽に声をかける

相当通っているらしい


「いや、俺の妹だよ。理人ってんだ」



「どうぞ宜しく」


時音はそう言いながらお辞儀をした



「へぇ、妹さんかい。かわいいね」



店の女将さんも出てきて時音を見ていた


土方はいつも通りといった感じでカウンター席に座った。時音を隣に座らせて、メニューを見せた



「土方さんはいつものでいいのかい?」



「あぁ」



『いつものってなんだろう?』



とは思ったが、いやな予感がしたので『同じの下さい』とは言わなかった


普通にオムライスを注文してから、初めてゆっくりと店内を見渡した


気がつくと、時音の席の1つ向こうに銀髪の男が座ってこちらを見ているのが見えた


多少気にはなったが、その時ちょうど土方の前にマヨネーズ丼が出てきた


苦笑いして見ていると土方が言った



「土方スペシャルだ。凄いだろ」


「お兄様、小学生みたいです…」


苦笑いのまま時音は小声で誇らしげな土方に言った



『ん?』と言いたげな顔で時音を見た時、時音の奥にいる銀髪と目が合った


タイミングよく、銀髪の男の前には粒あんの載った丼が出てきた



「テメー、まだそんな気持ちのわりーもん食ってんのか?」



土方がその男に言った



「あぁ、ちょっと女連れだからって調子にのんじゃね〜よ、マヨラーが!!」



「あの、腰を折るようで申し訳ないんですけど、妹です…」




時音が銀髪の言葉を訂正した



「へぇ…妹ね…。似てるようで似てないようで…」



核心を突くような洞察に嫌な顔をしながら土方が説明した



「妹っつっても腹違いだしな…。母親がなくなったから俺を頼って出てきたんだよ。手出すなよ?」



「そうなの?だから、なんとなくしか似てないのか…」



妙に納得して時音を見た


何か思い出したように時音が持っていたスプーンをオムライスの皿に置くと、立ち上がり銀髪の男に向き直った



「土方理人です。いつも兄がお世話になってます…」



「はい、いつもお世話しています。坂田銀時です」



軽い挨拶が返ってきたが、土方は納得いかずに後ろで吠えている


「いつもお世話してやってるのは俺達のほうだ。もういいから、お前は座って食事をしなさい」



ちょっと不機嫌にモノを言う土方だったが何だか本当に兄が出来たようで嬉しかった


だから素直に「ハイ」と言って土方の隣に座った


妹の立場を何となく理解した銀髪のその男はそっと微笑むと名刺を出した



「お兄さんの対処に困ったときは連絡してね」



小豆丼を食べ終わったその男はそのまま出て行った



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