ヒカルの碁 短編集

□思春期
1ページ/1ページ


中学生にもなると小学生の頃には意識していなかった性の部分に意識が向くようになっているのだろうか
仲の良かった女友達が次々と彼氏を作り、やんちゃばかりしていた男友達も挙って髪を逆立て、悪ぶって女子の気を引きたがる

まるで、異性と交際することによって自身を確立したがっているようで…

「そういうのって違うと思うの」
「そうかあ?」
「付き合ったかと思えばすぐに別れて、数日後にはまた違う男と付き合って…人を好きになるのはいいことだと思うけど、何か違う気がするの」
「まあ、お前の言うことにも一理あるな」

将棋を指しながらする会話でもないのだろうが、この男とはそんな些細なことを気にしたところで意味がない
加賀という人物はそういう男だ

「あー、また負けた!」
「俺に勝とうなんざ100万年早いわ!」
「もう…」
「この指し方は嫌いじゃねーけど、俺には通用しねーよ」
「いけると思ったんだけどなあ」

荷物をまとめながら考えるのは先程の話

一昨日、幼稚園からの付き合いだった友人が彼氏にフラれたと泣いていた
付き合って2週間だった

それって付き合ってたの?そう尋ねると泣いていたはずがみるみるうちに怒り出し、終いには絶交を宣言された

友情なんて男が絡めば水より薄いとはよく言ったものだと思ったが、私が悪かったのだろうとも思う

ただ、それでも…

「私は…運命ってあると思うの」
「運命ねえ」
「うん…いつか、巡り会えるって信じてる…初めて好きになった人と結婚して、子供を産んで、時には喧嘩もするけど幸せに暮らして…老いて死ぬの」
「重いなあ」
「そうね」

でも、信じてる
彼女達みたいに、誰彼構わずなんてそんな事できない
一時は好きなのかもしれない、けど、2週間で終わってしまう恋なんて

「つまりは悔しいんだろ」
「ッ!」
「図星だ」

勝ち誇った男の顔がこの上なく憎たらしい

「誰が…悔しいって?」
「お前だよ、好きな人もいなけりゃする事もねえ、唯一する事といえば俺と覚えたての将棋を指す事くらいか」
「バカにしてるの」
「いや、同情してやってんだよ」
「………」

パチ、パチ、と駒を並べる様を半ば睨むように眺めていると座るよう促される

「6枚落ちのハンデをやるよ、俺が勝ったら素直になれ、お前が勝ったら付き合ってやるよ」
「………それってハンデになってないし…私には何のメリットも…」

ニヤリと上がった口角が腹立たしいったら…



そうすりゃ少しマシになるだろ



勝っちゃったよ!あー残念残念全然残念そうじゃない






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ