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三年ろ組、用具委員会の富松作兵衛は、夜中の忍術学園を歩いていた。
何故、富松が夜中、忍術学園をうろついているのかというと、昼間失くした手裏剣を探すためだった。
本当は日が出ている内に探しておきたかったのだが、つい先程まで用具委員会の会議が開かれていたため、それが出来なかったのだ。


「こんなに暗くちゃ手裏剣なんて見つからねえよ…」


富松は、昼間練習していた辺りの茂みを掻きわける。
しかし、暗くて何も見えない。
やはり明日の朝にでもまた探しに来ようと、三年長屋へ戻ろうとした時、近くの茂みが不自然に動いた。


「誰か居るのか?」


返事はない。
富松は次に何が起こるか分からない状況に身構える。


「待て、作兵衛。俺だ」


聞き慣れた声。
その声の正体は、用具委員長の食満留三郎だった。


「せせせ、先輩!?」


富松は吃驚すると同時にほっとした。


「ん?どうした?そんなに驚いて…」


「い、いえ!何でもありません!」


(お化けかと思っただなんて絶対言えねえ!)


「そうか…」


そこで富松はふと、何故食満がこんなところに居るのかという疑問にかられた。
六年長屋はこっちではない。


「ところで食満先輩はこんな所で何をしてるんですか?」


「お、俺は…その…散歩だ散歩」


しどろもどろになりながら応える食満を、富松は疑わしげな目で見た。
その視線を受け、食満は目を泳がせる。



「ま、まぁそんなことはどうでも良い。作兵衛、早く部屋に戻れ。こんなに暗くっちゃ、探し物は見つからないぞ?」



「は、はい…」


富松は食満に頭を下げ、三年長屋に戻ろうとした。


ガサッ


再び茂みが不自然に動いた。
そして、影が飛び出し、富松に襲いかかる。


「うわああああ!」


富松はとっさに食満に抱きついた。
しかし…


「作兵衛、落ち着け」


と、食満に言われ、埋めていた顔を上げる。


にゃん


一匹の猫がいた。


「ね、猫…?」


声が裏返っている。
余程驚いたのだろう。


「大丈夫か?」


富松は食満の声で我に返り、改めて自分が今、食満に抱きついていたことを思い出した。


「す、すいません///!」


富松はすぐさま食満から手を離す。


(恥ずかしい///!)


もし自分が怖がっていたなんて知れたら、合わせる顔がなかった。
しかし、予想に反して、食満はその事については触れてこなかった。


「さぁ、長屋に戻るぞ」


と、先に歩き始めた。
富松は急いでその背中を追いかける。
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