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□B
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「あれ、ハチは?」


昼飯時、久々知は食堂竹谷が居ないことをふと疑問に思った。
竹谷と同じろ組の鉢屋と不破は、隣の机で昼飯を食べている。


「三郎、ハチはどうしたんだ?」


「ハチ?ハチならさっき七松先輩と一緒に居たぞ?」


「七松先輩と?」


はてと首を傾げたとき、話していた竹谷と七松が一緒に食堂に入ってきた。


「八左ヱ門、AランチとBランチ、どっちにする?」


「そうですねー…俺はBランチにします」


「そうか。では私もBランチにするぞ」


二人はBランチを頼むと、久々知と尾浜の座る席から遠い机に向かい合って座る。
その様子を、久々知はじっと見ていた。


「ねえ、勘ちゃん…。俺、七松先輩嫌い」


「え、いきなりどうしたの?」


「…」


久々知は一気に椀に入った飯を掻き込むと、膳を下げ、さっさと食堂から出て行ってしまった。
尾浜も急いで食べ終え、久々知の後を追っていく。


「ねぇ、兵助。ハチと何かあった?」


「別に…」


(付きあって四カ月…。倦怠期かな…)


五年間同じ組、同じ部屋だったため、尾浜は久々知のこととなると流石に鋭い。
最近の竹谷の行動を見ていれば、もしかしたら鉢屋と不破も気づいているかもしれないが…。


「じゃぁ兵助…。俺と付き合おっか」


「え…。…えええ!?」


尾浜の衝撃の告白に、久々知は素直に驚いた。


「勿論振りだよ振り。付き合った振りして、ハチを嫉妬させるんだよ」


「勘ちゃん……大好き」


こうして二人の『ハチ嫉妬大作戦』が始まった。
付き合っていると公にしてしまうと、浮気になってしまうため、何も言わずに竹谷の前でいちゃつくということになった。
そしてその日の夕飯時。


「勘ちゃん、その豆腐頂戴…」


「良いよ。はい、あーん」


「あー…んっ」


久々知は、尾浜が口の前に差し出してきた豆腐を口に含む。


「美味しい?」


「うん」


バカップルのようなその二人に苛々していたのは竹谷ではなく鉢屋だった。
まぁ、目の前でそんなことをされて苛つかない者など、天然の不破と、鈍感の竹谷くらいであろう。
結局、竹谷を嫉妬させるという願いは叶わず、その日はもう消灯時間が近づいていた。
久々知と尾浜がそろそろ寝ようかと、布団を敷いていると、何者かが久々知と尾浜の部屋の前で足音を止めた。
足音は二人分。


「邪魔するぞ…」


そう断って部屋に入ってきたのは寝間着姿の鉢屋と不破の姿だった。


「お邪魔するね」


不機嫌な様子を隠そうともしない鉢屋に対して、不破はにこやかな笑みを浮かべて入ってきた。


「どうしたんだ?二人とも…」
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