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□A
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「土井半助!私と勝負しろ!!」


土井が入ってきて突然言うものだから、その場に居た者たちは、一斉にひっくり返った。
諸泉だけは、首を傾げて三人を見ている。


「ちょっと待ってくれよ。どうしていきなりそうなるんだ?」


「私はお前にどうしても勝ちたい」


諸泉は拳に力を込めた。
余程土井に負けたのが悔しいのだろう。


「だからって何もこんな所で戦うことないだろう。取り敢えず、茶でも飲んで落ち着け」


土井は、湯呑みを二人分用意すると、急須に茶葉とお湯を入れ、湯呑みに均等になるように茶を注いだ。
そしてそれを諸泉の前に差し出すと、諸泉も渋々椅子に腰を下ろす。


「私は落ち着いている…」


諸泉は自分でも分かっていた。
土井を目の前にすると、冷静では居られなくなることを…。
しかし、悔しいという気持ちだけが一人歩きしてしまい、どうにも感情の高ぶりを押えることが出来ないのだ。


「私は、一生お前に勝つことが出来ないのか…?」


諸泉は、聞いているこっちまで悲しくなるような声でそう呟いた。
今にも泣きそうな表情だ。


「諸泉くん、君はまだ若いんだ。私なんてすぐに追い抜いてしまうさ」


土井は優しい声色で諸泉を励ました。


「べ、別にそんなこと言われても嬉しくない///!」


(顔真っ赤にしちゃって…。そんなに嬉しいのかね)


クスッと笑みを溢す土井を見て、諸泉はついむきになって立ち上がる。


「わ、笑うなぁ///!」


「はいはい」


諸泉は冷静になれと、自分に言い聞かせ、座りなおした。
そして二人の間には沈黙が訪れる。


「そ、そろそろ帰らないと…」


諸泉はふと、自分が訓練の途中で抜けてきたことを思い出した。


「ちょっと待ってくれ…」


諸泉が帰ろうと立ち上がろうとした時…


「んっ……///!?」


不意に唇に何かが押し当てられた。
それは土井の唇だった。
乱太郎ときり丸に見えないように、いつも持ち合わせている出席簿で隠しながらのものだった。


「な?たまには、出席簿を使うのも悪くはないだろう?」


「///」


顔を赤くしてオロオロしている諸泉が愛らしくて、土井は頬を緩める。


「か、帰る///!」


「気を付けてな」


土井が笑顔でそう言うと、諸泉は全力疾走でタソガレドキ城まで戻っていった。


「遅かったな、尊奈門…」


「すいません」


「何かあったのか?」


「べ、別に何もないですよ///!」


諸泉は足早にその場を去っていった。


「若いねぇ、尊奈門…」


fin.
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