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□B
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「い、伊作…何をしている…」


いつの間にか障子戸を開けて、立花が立っていた。
夜中に用を足しに行こうと近くを通りかかっていたのだ。


「仙蔵?どうしたの?こんな夜中に…」


「良いから私の質問に答えろ」


立花は食満を一瞥し、再び善法寺に視線を戻した。
その目には怒りが浮かんでいる。


「僕達の邪魔しないでよ、仙蔵…」


「逃げろ仙蔵!!」


善法寺のただならぬ雰囲気に、食満は危険を感じ取った。
しかし、立花はそこから動かない。


「仙ぞ……がはっ!」


善法寺は叫ぶ食満の腹に蹴りを見舞う。


「伊作お前…」


「仙蔵…。僕達の邪魔をするなら、いくら仙蔵でも許さないよ?」


「留三郎を離せ…」


立花は殺気立った。
取り敢えず食満を助けるのが先決と、立花は徐々に食満の方に近づいていく。


「残念だよ…仙蔵」


善法寺は丸腰の立花に向かっていく。
そして…


「っ…!?」


「じゃぁね、仙蔵」


善法寺は懐から苦無を取り出し、仙蔵の腹に容赦なく突き刺した。
立花は痛みに顔を歪める。
腹からは止めどなく血が溢れている。


「い、さ…く……」


立花は何も言わなくなった。


「これで邪魔者は消えたね」


善法寺は食満に笑顔を見せる。


(狂ってる…)


「これで心置きなく二人の時間を過ごせるね」


「く、来るな!」



バッ



食満の身体は汗でびしょ濡れだった。
どうやら夢を見ていたみたいだ。


「留三郎…?」


目を擦り、眠そうな善法寺が隣に居た。
起こしてしまったのだ。


「ゆ、夢…」


食満はほっとする。
そして、隣の善法寺をぎゅっと抱き締めた。


「どうかしたの?留三郎」


「いや、何でもない…」


善法寺は食満の背中を撫でる。
まるで子供をあやすように…。
しかし、口元には、食満が夢で見た善法寺が浮かべていた笑みと同じものがあった。


「大丈夫だよ…」


fin.
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