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「尊奈門」


いつものように訓練をこなしていた諸泉尊奈門は、声に振り向いた。
木の上ではタソガレドキ城忍び組頭、雑渡昆奈門が竹筒に入っている雑炊をすすり上げている。
そんな雑渡が諸泉に一通の文を寄越した。


「それを忍術学園の善法寺伊作くんに渡してきてくれ」


「またですか?」


「良いから行ってこい」


諸泉はしぶしぶ文を受けとると、忍術学園まで急いだ。


(最近組頭は善法寺くんとよく文通をしている。が、その内容を教えてくれない。……気になる!)


雑渡と善法寺の文を毎回運んでいるのは諸泉だった。
「足腰を鍛えられる」と、雑渡に言われていつもタソガレドキ城から忍術学園まで往復させられる。


(それなのに私に手紙の内容を言ってくれない…。どんなやり取りをしているんだろう)


諸泉の頭の中に色々な妄想が沸き上がってくる。


(まさか!二人して私の悪口を言っているとか?)


と、そんなことをあれこれ考えている内に忍術学園まで辿り着いていた。


「タソガレドキ城の諸泉尊奈門です。雑渡昆奈門から善法寺伊作くんに文を預かって参りました」


忍術学園の門を叩いて、丁寧に言葉を並べると、中から知った顔が出てきた。


「諸泉くんか」


「ど、土井半助!?」


いつもなら事務の小松田秀作が出てくるはずなのだが、今日はどうしたことか一年は組の教科担当教師である土井半助が姿を現した。


「そんなに驚かなくても良いじゃないか。今、小松田くんは吉野先生に呼ばれて忙しいんだ。また善法寺伊作に手紙か?」


「ええ、組頭から…」


そう言って手紙を渡し、さっさと帰ろうと思った諸泉だったが、そう易々と事は運ばなかった。
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