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□B
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「留三郎ー!」


そこは忍術学園六年長屋。
六年は組の善法寺伊作と、食満留三郎の部屋だ。


「何だ?」


「留三郎は用具委員会委員長だよね?」


「あぁ、そうだが…」


何故いきなりそんなことを、と思い、食満は首を傾げる。


「じゃぁ、お願いがあるんだけど…良い?」


善法寺は両掌を合わせ、『お願い』のポーズをとった。
そんな善法寺の姿に胸撃ち抜かれた食満は、簡単に善法寺のお願いを聞き入れた。
そのお願いとは…。


「にしても…縄なんて何に使うんだ?」


食満は、善法寺に頼まれた通り、縄を用具倉庫で探していた。
それらを保健室に運んでおいてくれと、善法寺に頼まれたのだった。
食満はそれを見つけると、保健室まで運んだ。


「これでよし、と」


縄を保健室に置くと、ふと自分が今日の風呂焚き当番だということを思い出し、風呂場に向かった。


「今日はやることが多い日だな…」


などとぶつぶつ言いながら、燃え盛る火の中に薪をくべていく。


「湯加減はどうですか?土井先生」


浴槽に浸かっている土井に、食満が訊ねた。


「そうだな…もう少し熱くても良いかな」


土井の言葉に、食満は再び薪をくべた。
と、その瞬間。
いきなり火の粉が飛び散り、食満を襲う。


「うあぁ!」


「どうした!?」


食満はまともに火の粉を浴びてしまった。


「大丈夫か?」


「は、はい…。でも、念のため保健室に行ってきます」


「あぁ、そうしなさい」


火の粉は、顔や首筋に数ヶ所と、露出していた部分にのみかかった。
こんなもので保健室に行くのもどうかと思ったが、何より保健室には善法寺が居る。
だから、食満は逆に保健室に行きたかったのだ。


「伊作、居るか?」


「留三郎?」


食満が保健室の障子を開けると、中では善法寺が薬草を煎じている様子だった。


「どうかしたのか?」


「風呂焚きの当番をしていたら急に火の粉が飛んできてしまってな…」


「へぇ、火の粉がね…」


善法寺は食満の火傷の部分にそっと触れる。
善法寺の口元に浮かぶ妖しい笑みに、食満は背筋がぞくりとした。


「じゃぁ、ちょっと待ってて。火傷に効く薬草が今切れてて…。すぐに裏庭の薬草園で摘んでくるから」


「分かった」


そう言うと、善法寺は立ち上がって保健室から出ていった
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