Novel TIGER&BUNNY

□好きな空の色は?
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「少し前までは、飛んでいて気持ちがいいし、飛びやすいから、雲一つない青空が一番好きだったんだ」

キースさんのお家のソファに並んで座って、他愛ない話をしていた時。
キースさんの目がふと窓に止まって……窓の外の空を見つめたまま、そう呟いた。


「前まで…って事は、今は違うんですか?」
「そうだね、ちょうど…今みたいな空が、今は一番好きだね」
「え…?」
キースさんの指先に促されるままに、僕も窓の方へと視線を向ける。
窓の向こうには、夕焼けに染まる少し前の、青空や雲、夜空になりかけている色が混じった空があった。


「夜になる少し前や朝焼けの時の、青空と薄い夜空のような優しい紫色が混ざっていて、とても綺麗なんだ、とても!」
「そうですね。すぐに様子が変わってしまうから、見ていて飽きませんし」
「そうだね。
それに最近は、今みたいな空を見ていると、君を思い出すんだ。そして、とても嬉しくなる」
嬉しそうに言われた、予想していなかった言葉に驚いて、思わずそちらを振り向けば、ちょうどキースさんもこちらを向いたところだった。


「え…ぼ、僕ですか?
どうして…」
「少しずつ様子を変えていって、でもそのどれも綺麗で目が離せないところも君に似ていると思うんだ!
…それに」
「『それに』…?」

優しく頬に手を添えられて、くい、と上向かせられる。
キースさんも少し背を屈めて、距離が近くなる。
目が合うと、キースさんの瞳が、嬉しそうに少し目尻が下がった。

「こうして君と見つめ合っている時に、私の目の色が映って、私の青色と、君の瞳の紫色が混ざったような色が見えるんだ。
この空は、こうして君と見つめ合っていられる時の幸せな気持ちまで思い起こさせてくれる。
だから今は、この空が一番好きだ! そして、見るととても嬉しくなる!」
「…っ! ///
ずるいです…、そんな」
「うん?」
「そんな事言われたら…僕も、この空を見る度に、思い出しちゃうじゃないですか…!」

至近距離でそんな言葉を、しかも、声からも瞳からも愛情を注ぎ込むように、幸せでたまらないと伝えてくるように言われて。

「思い出してはダメなのかい?
それは寂しい、とても…。」
「え、あ、違…!
その、この空がダメって訳じゃなくて…」
「うん?」

(…なんだろう、この公開告白する事になっちゃったような恥ずかしさ…!)
だって、これを伝えるという事は、自分の未熟さも、彼への憧れも……好きな気持ちも、全部を伝えるって事で。

それでも、この人にこんな寂しそうな顔をさせ続けるよりはいい、と恥ずかしさに口をつぐみたくなる自分を必死に奮い立たせる。


「―――ずっとずっと、雲一つない青空が一番好きだったんです。
アカデミーの頃から、ずっとあなたに…『スカイハイ』さんに憧れていたから。
ヒーローになれて、『キース』さんにも会う事ができて、やっぱり、あなたは真っ青で、どこまでも広くて高い、青空みたいな人だなぁ、って思って…」
「…………」
「だから、その…あなたを思い出すから、あなたに似てる青空が一番好きだったから…他の色の空に突然抜かせたくないような、でもあなたとこうして二人でいられる時も、僕にはもったいないくらい幸せで、だから…その」
「……」
「…キースさん…?
あの、何か不快にさせてしまったならごめんなさ…」
「可愛いっ!!」
「へ!?」

黙ったままだった彼に言いかけた謝罪は、途中で勢いよく強く抱き締めてきた強い腕と、大きな声で嬉しそうに叫ばれた声に掻き消されてしまった。


「え、えっと、あの…」
「すまない!そしてすまない!
けれど今は、嬉しくて、君が可愛くて好きでたまらないんだ!
もうしばらくの間、こうさせていてくれないだろうか?」
「は、はい。
…あの、」
「何かな?」
「謝らないでください。
…僕も、嬉しいですから…」


照れくさいけれど、どうにか告げた言葉に、キースさんはまた嬉しそうにしてくれて。
今度はハグだけじゃなくて、顔に、髪に、耳に……そこら中にキスの雨が降ることになってしまってしまった。




後書き
偶然夕方に見た、青と紫とかの色が混ざってる夜になる少し前の空を見て、『これは空折…!』となって勢いで書きました。(汗)
最後、書いてる時眠くなっていたのもあり、ちょっと不完全燃焼な感じに…次は頑張ろう。

ではでは、気に入って頂ける事を祈りつつ…。






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