短編
□思い出になるのなら美しくしなくちゃね
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「オイ、テメーらもう少し寄れ。カメラに入りきれねーよ」
「ほら、ボッスンもう少し詰めんかい!」
「そうネ。早くするヨロシ」
ヒメコの言葉に神楽も同感するとボッスンの首をゴキッと音がするぐらいに手で押した。
「痛い!痛い!首がごきってなった!」
『気のせいだ』
「もたもたするアンタがいけないんやろ」
「何でお前ら、俺に対して冷たいんだよ!」
「ちょっと喧嘩しないで下さいよ」
目の前でぎゃあぎゃあと騒ぐ彼らを見つめながら銀時は深いため息をはいた。
写真を撮らないか?と誰かが貰い物の古いカメラを持って発言した事によって三日間ぐらい撮影を行った。
フィルムにはボッスンと神楽のにらめっこや新八とヒメコの料理風景などの日常風景ばかり。
そしてフィルムが残り一回しかないので最後に皆で集合写真を撮る事にしたのだった。
「オーイ、テメーら準備出来たか?」
『バッチリだ』
「銀さん、早く来てくださいよ」
新八の言葉に銀時はヘイヘイと軽めの返事をしてカメラのタイマーセットをしてすぐさまに目の前にいる彼らの所へ向かった。
「よーし。スリー、ツー、ワンッ!」
ピース!
パシャと音が響くと思ったが音もフラッシュもしていなかった。
「あり?」
「何も起こらんで?」
「壊れたんでしょうか?」
『いや、壊れたハズではないが…』
「んじゃあ俺がまたタイマーセットしてやるよ」
そう言ってボッスンはソファから立ち上がり、スタスタとカメラへ向かう時、パシャと音が鳴ると同時にフラッシュした。
「あっ」
ボッスンの漏らした声が静かな部屋に響いた。
「なあ。スイッチ、ヒメコ。これ覚えてるか?」
ボッスンはポケットから一枚の写真を取り出した。
そこにはアホみたいに口を開いたファインダーにはみ出したボッスンとボッスンに隠れて見えないが万事屋三人とスイッチとヒメコが半分しか写っていた。
「うわー懐かしい!」
『あぁ。このあと、坂田さんと神楽とヒメコがボッスンをボコボコにしたんだよな』
懐かしむように呟くヒメコに対してスイッチはあの日の事を思い出したのか少しだけ苦笑した。
「こうして見るとあの頃の俺達ってバカみてーだよな」
少し古びた封筒の中にはあの頃の日々が写っている沢山の写真が何枚もある。
その中でこの最悪なタイミングで撮った最後の写真がどの写真よりも一番思い出の深い写真となっていた。
「本当や。ウチらが馬鹿みたいやわ」
『馬鹿だな』
「そう、馬鹿だよな」
三人は互いに顔を見合わせてぷっと吹き出し、馬鹿みたいに大笑いをしたのだった。
思い出になるのなら美しくしなくちゃね
(さて、あの日々の思い出でも)(語り合いましょうか?)
企画シザンサス様に提出