aoex(連載)

□説明
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奥村からの説明も一段落した時、志摩がはいはーいと手を挙げよった。


「双子いうくらいやから、燐くんとは仲良いんやろ?で、悪魔とも知っとる。何で雪男くんは、祓魔師なろう思たん?」


単刀直入に聞きよったな、こいつ…。
それは、気にならんやったわけやない。
せやけど普通聞きにくいもんやろ。


「またストレートに聞いてくるね…」
「まどろっこしいんは嫌いなんよ、俺」


さすが、女にも平然と連絡先を聞きまくるだけあるわ。
こいつには遠慮いうもんが見当たらん。


「一番の理由は、兄さんを守るためかな」
「燐くんを?」
「僕昔は病弱でさ、兄さんに守られてばかりだったんだ。弱くて、泣き虫で。よくいじめられてたんだけど、そんな僕を兄さんはいつも助けてくれてた」
「弱くて泣き虫やったん?今の雪男くんからは想像もできひんな…」
「僕も強くなったからね。兄さんが悪魔だと知った時は驚いたけど、神父さんに『一緒に兄さんを守らないか』って言われたんだ。それがすごく嬉しくて。今までは兄さんに守られてばかりだったけど、これからは僕が兄さんを守ることができるんだって」
「奥村は、兄貴いう守りたい人がおったから頑張れたわけやな」
「うん。確かに祓魔師になるまでの道のりは長かったけど、兄さんを守るためだと思ったらね。幸運にも、僕のすぐそばには聖騎士である神父さんもいたし」
「恵まれとったわけか」
「じゃなかったら、最年少祓魔師なんて無理だよ。そもそも、祓魔師にすらなってなかったんじゃないかな」


いろんな偶然が重なり、奥村は最年少祓魔師の称号を手に入れたんやな。


「…兄さんのことなんだけどさ」


急に真面目な顔になった奥村は、俺らの顔を見ながらぽつりと話し始めた。


「騒がしくてうるさい人だけど、根はいい人なんだ。…双子の僕が言うのもおかしいかもしれないけど」
「双子やから分かることもあるんやないですか?それやなくても、優しいお人やと僕は感じましたよ」
「俺はおもろい人やなぁ思たわ」
「あのやかましさは、奥村とは似ても似つかへんな」
「はは、僕達双子は散々似てないって言われてきたからね」


少し寂しそうな顔。
その顔がもっと歪んだんは、次の言葉。


「いじめられっ子だった僕と違って、兄さんは腕っ節が強くて…いつも、悪魔だ化け物だと罵られてたんだ」
「え…そないひどいこと…」
「悪魔としての力が小さい頃から押さえ切れてなかったんだろうね。中学の頃は荒れてたし、学校自体あんまり行ってなくて」
「あぁ、さっき言うてたな」
「そのせいで、兄さんには友達らしい友達がいないんだ。だから…だから、よかったらみんなが友達になってくれないかな…って」


控えめな言葉は、奥村の切なる願い。


「…友達いうんは、なる言うてなるようなもんやないやろ」
「え…?」
「俺は、奥村の兄貴んことをもっと知りたい思うとる。それだけじゃあかんか?」
「僕も知りたいです。奥村くんの話聞いとったら、なんやほっとけないですしね」
「勝呂くん、三輪くん…」
「ちゅーか俺、もう友達になった気ぃやったんやけど。今度会う約束もしたし、雪男くんの話してもらう約束もしたやん?」
「あぁ、志摩さんしてはりましたね」
「僕の話は聞かなくていいんだけど…」
「何言うてんの、聞くに決まっとるやん!!せやから、早くまた燐くんに会うていろいろ話したいんよ〜」


楽しそうやな、志摩の奴…あの兄貴と歩調合いそうやし、ほんまに楽しいんやろう。


「みんな…ありがとう。…正直、あんなに楽しそうな兄さんを見たの、久しぶりだったんだ。だから、みんなが兄さんに興味を示してくれただけで嬉しいよ。…志摩くんの言葉は聞き逃せないけどね」
「若先生ー、俺にだけ厳しないー?」
「気のせいですよ」


ニコリと笑った奥村。
なんや、奥村も楽しそうやな。


「なぁ、奥村。兄貴は次いつ来るんや?」
「どうだろ…今日も急だったから」
「さよか」


次会うた時は、いろいろ話そう思う。
いつになるか分からへんけどな。



◇つづく◇

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