aoex(雪受け)

□先生の失敗談
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――頭が痛い、ふらふらする。
そんな風邪の兆候が見られる体に鞭打って、今日も講師としての仕事を全うする。


「今日の演習は僕、奥村雪男が担当します。全員揃ってますか?」


言って、集まっている生徒達を見る。
勝呂くん、志摩くん、三輪くん、宝くん、しえみさんに、神木さん。
兄さんもちゃんといるし、全員いる…と。


「全員いるようなので、早速演習の内容を説明します。今日みなさんには、実際に悪魔を祓ってもらいます。剣、使い魔、詠唱、どれを使ってもらっても構いません」
「ちょっとええですか?」
「はい、勝呂くん」
「今回はチームとかあるんですか?」
「チームは特にありません。演習が始まったら、僕が下級悪魔を放ちます。その悪魔を、各自のやり方で祓ってもらうだけです」
「分かりました」


勝呂くんはやっぱり真面目だな。
気になることはすぐに質問するし、何より、自分は祓魔師になりたい、なるんだ、という気持ちがすごく伝わってくる。
まるで昔の僕を見ているみたい――そう思った時、頭にズキリと痛みが走った。
思わず顔をしかめる。


「雪男?大丈夫か?」
「…うん、大丈夫。気にしないで」


兄さんが心配そうに僕を見てきたけど、僕はそれを適当にあしらう。
今は僕なんかのことを考えず、演習の方に集中してほしいから。
あぁ、この頭痛の原因はきっと兄さんだ、兄さんが問題を起こさないか心配だから…そう言い聞かせ、兄さんに向き直る。


「それより兄さ…奥村くん、炎に頼りきりの攻撃はやめて下さいね?」
「わ、分かってるっつーの!!」


くそ、心配して損した…兄さんの呟きはばっちり耳に入ったけど、いちいち拾って時間を無駄にはしたくない。


「では、演習を始めます」


兄さんが降魔剣を抜き炎を身に纏う。
勝呂くんと三輪くんが詠唱の準備をする。
志摩くんが錫杖を構える。
しえみさんと神木さんが使い魔を呼び出す。


「――始め!!」


各自身構えたのを確認し、フェレス卿が準備してくれた下級悪魔を放つ。
生徒達に一斉に襲いかかる悪魔。
演習ということもあり一匹一匹は大したことない悪魔だけど、いかんせん数が多い。
うじゃうじゃとした悪魔の大群が自分達に向かって一直線に襲ってくるなんてこと、みんなにとってはきっと初めての経験だろう。


「おわっ、きた!!」
「落ち着けや、奥村」
「あぁっあかん、あれ虫豸おるやん!!若先生いじめんとってくださいよぉ!!」
「ちょっとあんた、うるさいわよ」
「志摩さん、こないな時のためにキリク練習したんやないですか」
「せや、お前にはキリクしかないんやから気張れや阿呆」
「俺に味方はおらへんの!?」


いじめるも何も、この下級悪魔を準備したのはフェレス卿なんだ、文句ならフェレス卿に言ってもらいたい。
…そう言いたかったけど、変に声を掛けてこちらに意識が向くことは避けたい。
その一瞬が、命取りになることだってあるのだから。


「よっしゃ、いくぜ!!」


兄さんの一言で、みんな改めて構える。
嫌そうな顔の志摩くんも戦う意志はあるみたいだ、一応錫杖を構えている。


「志摩、俺達は前に出るぞ!!」
「えぇ!?うそやん!!」
「うそじゃねぇよっ」
「ちょ、手ぇ引っ張らっ…嫌やぁあああ!!」

「ニーちゃん、勝呂くんと三輪くんを守ってあげて!!」
『ニー!!』
「子猫、来るでっ」
「はい!!」

「私達もいくわよ、ミケ、ウケ!!」
『まったく、わしらの扱いが酷い奴じゃ』
「うるさいわね、さっさとやりなさいよ!!」


各々の得意分野を生かし、お互いに守り守られながら悪魔を退治していく。
うん、チームワークも大分いいし、この調子なら何の問題もなく終わりそうだ。
…そう安堵した時。


「なんやこれっ、全然効かへん!!」


志摩くんの声に、急いで視線を移す。
下級悪魔ばかりで、攻撃が効かないなんてことはそうそうないはずだからだ。
そして気付いた、下級悪魔の中に中級の悪魔が混ざっていることに。


「志摩くん、離れてください!!」
「え?」


志摩くんを襲っていた悪魔に向かって、懐に忍ばせておいた銃を撃つ。
非常事態だし、演習は中断するしかない。


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