aoex(その他)

□幸せな一日を夢見て
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雪男と、クロと、それからジジイ――父さんと過ごす、そんな一日。





「おら、今日はお前らの待ちに待ったクリスマスだぞー?」


ジジイのその言葉にあぁと思い出す。
今日は12月25日だ。


『なぁなぁ、くりすます、ってなんだ?』
「クロが、クリスマスって何?だってさ」


クロの言葉を聞くことができるのは悪魔である俺しかいなくて、だから自然と通訳者として俺がクロの言葉を伝えることになる。
雪男やジジイにはにゃーという鳴き声しか聞こえてないんだ、これが人間と悪魔との違いと思うと…まぁ今そんなこと言ってもしょうがないんだけどな。
で、今回もその役目を果たしたわけだけど。


「神父さんに聞かなくても、兄さんが教えてあげればいいじゃない」
「え…」


雪男が当たり前のように言ってくる。
けど、俺に聞かれても困る。
クリスマスって何、なんて質問難しすぎるだろ、俺にも分かんねぇよ…。


『なぁりんー、くりすますってなにー?』
「えーっとだな…クリスマスってのは…えっと…あ、あれだ、ケーキを食べる日!!」
「それじゃあ誕生日と変わらないよ」
「うぐ…」


痛いところを突いてくる雪男に、俺は反射的に言葉を詰まらせてしまった。
出来のよすぎる弟を持つと本当に困るな、兄ちゃんとしてかっこいいところも見せられやしない。


「でっでも、俺達にしてみれば誕生日もクリスマスも一緒だろ?」


そう、今回は反論できる要素があった。
俺と雪男にとって、クリスマスも誕生日もそう変わりはない。
俺達の誕生日、12月27日は、クリスマスが近いからという理由で毎年まとめてお祝いするようになっていた。
クリスマスと誕生日は、言わば同じもの。
俺の言葉に、雪男は困ったような顔をした。


「まぁそうだけど…」
「ほら、な!?だからこれでいいんだよ!!」
「うーん、納得いかないなぁ」
「つっても、事実だし。クリスマスはケーキを食べる日!!異論はねぇな?弟よ」


ふっ、ついにあの雪男を言い負かしたぜ!!
何だかものすごい優越感。
にやにやしながら雪男に同意を求めると、気持ち悪いと顔を押しのけられた。


「クロ、クリスマスってのはな、イエス・キリストの誕生日を祝う日のことだ」
『いえすきりすと?』


そんなやり取りがあってる後ろで、ジジイがクロにクリスマスとは何かを教えていた。
いえすきりすと?
俺の頭にも疑問符がとぶ。
でもそいつの誕生日だから、ケーキ食べてお祝いするのか、成る程なぁ。
ならプレゼント用意しねぇと…プレゼント?


「イエス・キリストが分からんって顔だな、クロ。イエス・キリストってのはな、」
「サンタさんからのプレゼント!!」
「そうそう、サンタからの……は?」


そうだよクリスマスと言えばプレゼントじゃねーか、サンタさんからの!!
何でこんな大事なこと忘れてたんだ俺!!


「だーかーらー、サンタさんだよ!!クリスマスって言えばサンタさんだろ?」
『なぁなぁ、さんたさん、ってなんだ?おいしいのか?』
「サンタさんは食べ物じゃねぇよ!!サンタさんってのはなぁ…――」


さっきまでクリスマスを説明してたジジイだけじゃなく、雪男まで俺を見てびっくりしたような顔をしてやがる。
ははーん、俺が先にサンタさんの話をし始めたからびっくりしたんだろ?
いつも頭悪いだバカだと俺を見下してんだ、サンタさんの存在を思い出した俺のことを見直しても当然だよな!!


「…このままじゃ埒があかねぇな。俺はケーキの準備でもしてくるわ」
「あ、僕も手伝うよ、神父さん」
「いや、お前はクロに間違った知識を教えないよう燐を見張ってろ」
「はは、分かった」


雪男とジジイがそんな会話をしていたとも知らず、俺は誇らしげにサンタさんとは何たるかをクロに語ってみせる。
俺だってやればできるんだ、雪男やジジイに頼らなくてもクリスマスが何なのかくらいクロに教えてやれるっつの!!


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