aoex(燐受け)

□声に犯されて
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今の時刻、午後9時。
今日は雪男が任務で遅くなるらしい。


「…暇だなぁ」


旧男子寮にはテレビなんてものはなく、クロも夜の散歩に出掛けたから、俺は一人、部屋のベッドの上でごろごろしていた。
天井をぼうっと見上げる。


「せっかく雪男もいねぇのに…なーんかやる気が起きねぇんだよなー」


ぶつぶつと文句を言いながら、もうこうなったらいっそのこと眠ってしまおうかと半分目を閉じかけて考えていた時。
ふいに鳴り響いた、携帯電話の着信音。


「おわぁぁあ!?…び、びっくりしたぁ」


静まり返っていた部屋にその音はよく響き、俺は慌てて飛び起きた。
落ち着かないまま、未だ鳴り止まない携帯電話を探す。


「…はい、もしもし」
『こんばんはぁ、奥村くん。もしかして、もう寝てはった?』


何も確認せず電話に出てみたら、どうやら相手は志摩だったようだ。


「いや、今寝ようとしてたとこ」
『そうやったん?うわぁ、せやったら俺電話かけへんやった方がよかったかいな?』
「気にすんなって。暇してたから寝ようかなと思ってただけだし」
『あ、なら今話せるん?』
「おぅ、大丈夫だぜ?今日は雪男も任務で遅くなるって言ってたし」
『…若先生、今おらへんの?』
「だから任務だって」
『へー…』


…志摩の声が、変わった気がした。
いつものへらっとした声から、何か企んでいるような笑いを含んだ声に。


「し、ま?」
『ちょぉ、そない怯えたような声出さんとってよ。ひどいことなんてせぇへんし』


そうは言っても、志摩の声は電話に出た時とは明らかに違っていた。
企んでいるような声じゃない、今の志摩の声は低く、そして甘いものになっていた。
まるで――あの時、みたいに。


「…っ」
『あれ、何想像してはるん?』
「別に、何も…」
『そうだ、奥村くんに良いこと教えたるよ。聞いてくれはる?』
「な、何だよ?」


この続きは聞いちゃダメだ。
嫌な予感しかしない。
…でも、体がまるで操られているように、自分の意志では動かせない、そんな不思議な錯覚に陥っていた。


『あんな、俺も今…部屋に一人なんよ』
「え、…」
『せやから、……今ならヤりたい放題や』


ほら、やっぱり聞いたらダメだった。





俺しかいない部屋の中、雪男はまだ帰ってくる気配すらない。
いや、帰ってこられたら困る。
だって、今この部屋には。


「あぁっ…まだっ、だめなのかよぉ…?」
『あかん言うたやろ?俺の言うこと聞いてへんかったの?』
「ちが、けどっ…も、げんかいぃぃ!!」


静寂を破るぐちゅぐちゅという水音と、自身の甲高い喘ぎ声が、俺の耳を犯す。
それがまた興奮材料になり、この部屋は淫靡な空気に包まれていた。


『力、抜いたらあかんで?いつもシてるように、でも逆の手ぇで自分でスるんや』


志摩に言われた通り、携帯電話を右手で持って、空いた左手で自分のペニスを扱く。
いつも右手でしているからか、左手だといまいち力加減が分からず、でも志摩に射精は許されてないから、我慢したまま。
下半身だけ晒した俺の格好はきっとひどいものだろう、ペニスは完全に天を向き、顔はイけない苦しみから出る涙と飲み下せなかった涎でぐちゃぐちゃなはずだ。


「はぁ、あぁっ!!…あ、ここ、いいっ…」
『イッたらあかんで?奥村くん』
「もうイキたいっ…出したいよぉ!!」
『あかん、まだ我慢や』
「うぅ…」
『やからって、手ぇ休めたらあかんで?そしたらもっと我慢してもらうわ』
「わかっ、たぁ…うぅん、あぁっ」


もういつイッてもおかしくないくらい、俺は追い込まれていた。
例え慣れない左手とはいえ、自分のイイトコロくらいは把握している。
変に手を緩めると勘の鋭い志摩には気付かれてしまうから、さっきからイイトコロばかりを遠慮なく弄っていた。


「ひぅ、うぅっん…ひぁっ…はぁ…」
『ほんま、かいらしい声出すなぁ』


楽しそうな志摩の声。
でも俺の体は言うことを聞かず、耳元から聞こえる志摩の言葉に従うしかなかった。


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