aoex(燐受け)

□残された課題
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「…なぁ、さっきから思ってたんだけどよ」


俺は窓の外へと目を向けた。
雪男の出掛けた今、旧男子寮には俺しかいなくて、でも山積みになった課題を終わらせてないともっと課題を増やすと言われ、仕方なく机に向かいうんうん唸っていた時。
そいつは唐突にやってきた。
声を掛けたら十中八九邪魔されると思って無視してたけど、あまりの視線に耐えきれず、ついに声を掛けてしまったのだ。
声を掛けられた相手は、どことなく嬉しそうな顔をした、ように見える。


「何ですか?奥村燐」
「…ここ、6階なんだけど」


窓に張り付くようにしてそこに存在しているが、俺のいる場所は6階。
普通に考えておかしいだろ。
例え日頃バカだと言われても、これがおかしいということくらいは俺にだって分かる。
何で6階にいるんだよこいつ。


「はい、登るのが大変でした」
「なら来るなよ」
「嫌です」


溜め息をつく。
何でこいつはいっつもこうなんだ。


「つか何でここに来るんだよ。メフィストんとこ戻れよ」
「嫌です」
「じゃあ虚無界に」
「嫌です」
「………」
「嫌です」
「まだ何も言ってねぇよ」


また、溜め息をつく。
何でこいつはいっつもこうなんだ。


「奥村燐、一緒に遊びましょう」
「は?嫌だよ。課題終わらせねぇと雪男がうるせぇし」
「課題?課題とは何ですか?」
「え?んー…やらなきゃいけないもの?」
「なら、ボクと遊ぶこともやらなきゃいけないことです」
「は?」
「今からボクと遊びましょう。これが奥村燐への課題、です」
「そんな課題があってたまるかっ!!」


こいつと話してたら先に進みやしねぇ。
俺は課題に向き直った。


「課題はしなくちゃいけないんじゃないんですか?」
「あ?だからしてるじゃねーか」
「ボクとの課題が優先です」


もうこいつダメだ。
上級の悪魔ってみんなこんななのか?
メフィストも、一流の食事がどうのこうの言いながらカップラーメン食ってたり変な柄のピンクの着物を着てたりするし、やっぱ変なヤツが多いのかも。


「聞いてますか?奥村燐」
「聞いてない」
「それなら聞いてください」
「やだ。忙しい」


構ってたらそれだけで日が暮れちまう。
集中、集中、集中…。


「…って、集中しても分からねぇもんは分からねんだよぉぉぉ!!」
「なら遊びましょう」
「うるせぇ!!」


雪男が帰ってくる前にこの山積みになった課題を終わらせないといけないのに…ぜ、全然分からねぇ…!!
…まぁ実はさっきからずっとこんな調子で、課題ほったらかしてゴリゴリ君でも買いに行こうかなとか考えてたんだけど。
分からねぇもんは分からねぇしな。


「手、止まってますよ」
「………」


このままここにいたんじゃこいつがうるさいし何も手に付かないし、やっぱゴリゴリ君買いに行こうかなぁ…あ、金ないんだった。


「奥村燐、いい加減中に入れてください」
「あ?」
「この体勢も疲れました」


そう言うこいつは、6階の高さにある窓に未だにぺたりと張り付いている。


「………」


うん、こいつはもう無視だ無視。
構っててもいいことないし。


「入れてください」
「………」
「部屋に入れてください」
「………」
「聞こえてますか?」
「………」
「奥村燐?」
「………」
「…好きです」
「………は、はぁっ!?」


な、何言ってんだこいつ!!好き!?
いやでも、別にこいつは俺のことが好きって言ったわけじゃねぇし…違う、よな?


「好きです」
「っ…」
「好きなんです」
「…な、何が」
「奥村燐が」
「…う、うわああああああ!!」


なんか今無性に走りたい!!
思いきり叫びながら走り出したいっ!!


「いきなり叫ばないでください」
「だって、いや、…えぇぇぇぇぇ!?」


うわぁ、うわぁ、うわぁ。
今ぜってぇ顔真っ赤だよ俺…!!


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