aoex(燐受け)

□僕だけを見て
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兄さんは僕のものだ。
誰にも渡さない、渡しはしない。


「兄さんは僕だけ見てればいいんだよ」


そう、今みたいに。
僕を見て、ほら、僕だけを見て。


「ゆきお…なん、で…」


体を震わせながら僕に顔を向ける。
あぁ、その怯えた顔も可愛いよ。
もう逆らえないもんね、僕としてはもう少しくらい抵抗してほしかったんだけど。
兄さんは優しいから。


「みんなに優しくするからだよ。兄さんには僕しかいないでしょ?」


魔神の落胤だからと、塾のみんなは兄さんのことを見捨てた。
魔神と血の繋がりがあるのは僕だって同じなのに、みんな兄さんだけを見なくなった。
それでも、兄さんは諦めなかった。


「僕も兄さんしか見てないからさ、兄さんも僕だけ見ててよ」


ゆっくりと頭を撫でてあげる。
それだけのことなのに、びくびくと反応する兄さんが可愛い。
それが僕のせいだということが、嬉しい。


「ねぇ兄さん、今どんな気分?」
「………」


優しく問い掛けるけど、反応はない。
それもそうだよね。
こんな格好、いい気分なわけないよね。





旧男子寮内に、地下への通路があることを発見したのは偶然だった。
そこに、寝ている兄さんを連れ込んだ。

兄さんのことが好きだった。
でも、兄さんには仲間ができた。
祓魔塾の塾生という、同じ志を持つ仲間。
今までは僕しかいなかった兄さんの世界に、仲間という存在ができてしまった。
それが悔しかった。

ご飯を食べていても部屋にいても、話すのはいつも塾のみんなのこと。
兄さんの世界は広がっていき、僕以外を見るようになった。
それが許せなかった。

その仲間は、呆気なく兄さんを裏切った。
魔神の落胤だという、不可抗力な事実に畏怖を感じ、兄さんを見なくなった。
それが嬉しかった。

ついに兄さんは僕だけを見てくれるんだ、また僕が兄さんの世界の中心になるんだ、そう信じて疑わなかった。
だけど違った。
兄さんの世界は、裏切られたはずの仲間へと向けられたままだった。
何で?どうして?
僕だったら兄さんを裏切らないのに、どうしてまだあんな奴らのことを気にかけるの?
それが悲しかった。

だから僕は、分からせてあげるんだ。
兄さんには僕だけだよ、って。
そのために兄さんをここに連れ込んだ。
もう何も見なくていいよ、苦しいものは何もないよ、僕が一緒にいてあげるから。

兄さんを連れ込む前に用意しておいたダブルベッド、そこへ兄さんを横たえる。
すやすやと眠ってる兄さん。
起きた時に部屋が変わってるなんて思いもしないだろうな。
その時の反応を考えだけで今から楽しみだ。


「兄さん、早く起きてよ」


呼び掛けても起きる様子はない。
それもそっか、さっきお茶に混ぜて睡眠薬を飲ませたからね。
なら、この間に準備をしておこう。

まずは兄さんの両手に手錠を嵌める。
それを頭上に持っていって、ベッドヘッドに外れないように固定する。
逃げられでもしたら困るからね。
あとは…そうだな、裸にしておこうか?
起きた時に何も身に付けてなかったら、兄さん驚くかな。


「あぁ、考えただけで楽しいよ、兄さん」


靴下だけを残しておくのも悪くないよね。
…いや、待てよ。
兄さんが目を覚ましてから、目の前で1枚ずつ脱がせていくのもいいかな。
恥ずかしそうに体を震わせる様を見るのもいいかもしれない。
うん、脱がせるのはやめておこう。
じゃあ、どうしようか。


「…あ、そういえば」


この前調合していた時に、悪魔にとっては媚薬効果のある薬ができたんだった。
たまたま発見したわけじゃなく、それ目的で調合したんだけどね。
兄さんのために調合したんだしせっかくだから使ってあげよう。
喜んでくれたら嬉しいな。


「これも、兄さんのためだからね?」


さて、部屋に媚薬を取りに行こうか。


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