拍手ありがとうございますーっ!!



あるところに、双子の姉弟がいました。
姉の燐は悪魔です。
常に元気いっぱいで明るく、弟より低い身長と膨らみのない胸を気にしています。
弟の雪男は人間です。
生まれつき体が弱いけれど意志は強く、姉を守ろうと必死に努力を重ねています。

これは、そんな双子の姉弟が祓魔師になるまでを綴った一つの物語。





「なんやろ、あの2人…なんや気まずい雰囲気やないです?」


そう言う志摩の視線の先には、隣同士で座る燐と雪男の姿がありました。
ここは祓魔塾の教室、今は休憩時間です。


「一緒に座っとんのはいつものことなんやけど…なんて言うんやろ、よそよそしい?特に奥村さんの方が」
「お前のせいとちゃうんか、志摩」
「今回は俺やないですよって」
「…今回は、かい」


一番前の席という誰の視界にも入る場所でお互い視線を合わせないものだから、2人は変に目立っていました。
というよりも、燐が雪男からひたすらに視線を外しているように見受けられます。
雪男はちらちらと燐の様子を窺っているのですが、当の燐が頑なに雪男と視線を合わせないので、一向に視線は交わりません。
そうこうしている内に、燐は腕を枕にして机に突っ伏してしまいました。


「あぁっ、奥村くんが奥村さん見て寂しそうな顔してはる…これは恋のキューピット、志摩廉造の出番とちゃいます!?」
「ちゃうやろ」
「ちゃいますよ」


勝呂と子猫丸の2人に即否定され、志摩までもが机に突っ伏してしまいました。
明らかな泣き真似をしながらのその行動に、しかし相手をしてくれる人はいません。


「せやけど、どうにかしたいのは確かやな。いっつも喧しい奥村がこない静かやなんて、なんや調子狂うゆうもんや」
「喧嘩でもしたんですやろか?」
「喧嘩、とはまたちゃいそうやな…姉貴ん方が一方的に避けとるだけみたいやし」
「ほんなら、奥村くんが奥村さんの大事なもん無くしたとか?」
「あの奥村が無くし物なんするか?」
「…なさそうですねぇ」


うんうんと首を捻る勝呂と子猫丸でしたが、結局正解までは辿り着けませんでした。
その後も雪男と燐に変化はなく、気まずい雰囲気のまま休憩時間は終わりを告げました。





「―――で?」
「………」


塾での授業が終わり、燐と雪男は旧男子寮へと帰ってきていました。
必死に目を逸らす燐の前には、腰に手を当てて仁王立ちしている雪男がいます。


「何であんな態度をとったの?」
「………」
「みんなに変な目で見られたじゃないか」
「………」


雪男がどれだけ言おうと、燐は口を開こうともしません。


「…僕があんなこと言ったからでしょ?」


それは確信に満ちた問い掛けでした。
雪男の言葉に、燐も先日のやり取りを思い出します。
可愛いよ、と言われたことです。


「嫌だったよね、あんなこと言われて」
「………」
「…嫌いになっちゃった?僕のこと」


がばりっ、燐が勢い良く顔を上げ雪男の顔を見つめ返します。
その勢いに雪男はたじろぎました。


「ね、姉さん?」
「――…ない」
「え?」
「……嫌いになるわけ、ないだろ」


燐の顔はどこか寂しそうで、悲しそうで…その表情に、雪男は慌てました。
嫌われたと思っていた雪男にとって、この反応は予想していないものだったからです。
塾での燐による無視は、雪男の心に大きな傷を残していたようです。


「…そっか」
「な、何だよその反応」
「ううん。…よかったって、安心しただけ」


雪男の顔に笑みが浮かび、燐もまた安堵し笑みを浮かべます。


「確かにびっくりはしたけど、俺が雪男を嫌うなんてねーからな!!」
「うん、…ありがとう、姉さん」


無事仲直りをしたところで、雪男は最初の疑問をぶつけました。
何故あんな態度をとったのか、です。


「無視しちまったのは、その…どう接すればいいのか分からなくて…ごめんな?」
「僕のほうこそ、あんなこと言ってごめん。自分勝手だったって反省してるよ」
「違うだろっ、雪男は悪くねぇし!!元はと言えば、俺が可愛いって言えとか意味の分かんねぇこと言ったからで…」
「…最近謝ってばっかりだね、僕ら」
「ははっ、だな」


塾での気まずい雰囲気はどこへやら、今では2人仲良く笑いあっています。
…その時、雪男が「あ、」と思い出したように声を上げました。


「姉さん、今日の授業聞いてた?」
「へ?…き、聞いてねぇ、けど…」
「明日からここで合宿するんだって」
「まじでかっ!!」


---------------




拍手ありがとうございました!!
拍手連載のリクエストは随時募集中です。



[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ