short stories
□012:痕跡
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おまけ そのA
昼休憩に入ると、唯厨がうつむき加減で俺に近寄り、シャツの裾を引っ張る。
ああ、振り向かなくても分かる。今唯厨の顔は、今までにないくらい真っ赤だろうな。
「れ、蓮二…」
「ん?なんだ?」
「もう、イイでしょ///首…隠してよ」
「あいにく今日は暑くてな。このままでいこうと思っている」
もっとも、いつもはどんなに暑くてもボタンを留めているのだが。
「…!じゃ、じゃあコレ貸すから巻いてて、ね!」
そう言って唯厨は薄手のタオルを俺の首に、半ば無理やり掛けると、
タオルの両端を俺の首元に押し込んだ。
もう!と言いながらその作業をしている唯厨の顔は真っ赤なままだ。
その手をつかんで、「恥ずかしかったか?」と尋ねれば、
小さな声で、「降参です…」と渋々つぶやいたので許すことにした。
まあ、今となっては『何故今頃隠した!?』という疑問が部員たちの中に残り、逆にこの痕を印象付けるのは、間違いなんだが。
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