short stories
□青春ってやつ
2ページ/3ページ
次の日。
私は起床時間よりも1時間も早く目覚めてしまった。というか、あまり寝つけずにそのまま朝を迎えてしまったみたいだ。
昨日のうちの片付けておこうと思ったのに、あんなことがあったからな…きっと大広間も汚いままだろう。
私は髪を少しだけ整えると、浴衣のまま大広間へ向かった。
ふすまを開けると、すでに掃除を始めている二人がこっちを向いた。
「唯厨ちゃん…お、おはよう」
長太郎は開けたふすまの目の前にいたため鉢合わせてしまった。
私を見るなりとっさに目をそむけ、空き缶集めを再開する長太郎。
「おはよう…長太郎、日吉…くん…」
ん…?なんで長太郎が気まずそうなの?
それよりも、私は私で日吉くんの顔をまともに見れないよ…!!
そんな私と長太郎をよそに日吉くんが話しかけてきた。
「泌香お前、昨日大丈夫だったか?」
「き、昨日!?な何が…?」
「向日先輩たちに酒飲まされなかったか?」
「え?」
「鳳と俺はひどい目にあった。なあ」
「う、うん…そうだね」
ははは。と長太郎は苦笑いしている。
なんだそっちのことか…
「私は平気…」
「そうか。あ、そうだこれ」
「え?」
大広間の割と奥の方にいた日吉くんは歩きながら浴衣の袖をごそごそと探った。
私の目の前まで来て、ぽんと差し出したのは私の携帯…なんで日吉くんが……?
「これお前のだろ」
「なんで日吉くんが…」
「それは俺が聞きたい。朝起きたら俺の布団の中から出てきた…」
私は、サッと血の気が引いていくのを感じた。きっと部屋に運んだ時に落ちたんだ…これって私が日吉くんの部屋にいたって証拠じゃない!
しかも日吉くん、昨日のこと全く覚えてないんだ…あんなに名前呼んで…あんなに……
恥ずかしさやら、むなしさやらでいたたまれなくなった私はうつむき加減で携帯を握りしめた。
「ふ、不思議だね。でもありがとう見つけてくれて。探してたの…」
本当はなくなってたことにすら気が付かなかったけど。
すると、いつもなら用が終わるとふいと行ってしまう日吉くんだが、今日に限って私の様子が変なことに気が付いたらしい。
「どうかしたのか?」
「べ、別にっ」
「ん?お前ココなんかついてるぞ…」
といって日吉くんが指差したのは、日吉くん自身の浴衣の合わせのところ。
すぐにそれが何なのか気づいた私はサッと浴衣の布を合わせ、隠した。だから長太郎はさっき…気まずそうにしてたんだ…!
そして日吉くんもその様子を見てこれが何か気づいたのか、ハッといて目を見開いた。
「わ、私!みんなを起こしてくるね!そろそろ起きないと…!」
私には、そういって大広間を出ることしかできなかった。
.