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それまで俺は、この猫のことなんてどうでもよかった。
いや、別に冷たく言うわけじゃなくて、ただ猫が泌香に懐いてて、泌香が連れて帰りたそうにしてたから、とりあえず学校からは一緒に出させた。
だからそのあと、泌香がコイツを飼おうが、また野良に戻そうが、好きにすればいいと思ってた。
こいつの、泌香のこの横顔を見るまでは…
「(なんつー顔してんだよ)」
単に猫との別れを惜しむってだけじゃない。猫が自分の手から離れることを、悲しんでいるように見えた。自分のものが無くなるのが嫌だという感じじゃねえ。離される、猫の悲しみが泌香の顔に浮かんでいた。
次の瞬間、俺はその猫を地面から抱き戻していた。
「じゃあ、俺が飼うわ」
「え…でも」
「別にいいぜ。うちには犬がいるけどよ。まあ、なんとかなるだろ」
「ほ…よかった」
「(泌香のやつ、やっぱ心配だったんだな…)」
「よかったよ。ほんとよかったね、りょう太郎!」
「…もしかして、それ、コイツ名前か…?」
「うん。りょう太郎。」
「なんだよそのネーミング…」
泌香いわく、俺に似てツンにデレなところとか、白くて艶のある毛並みが長太郎に似てるから「亮・太郎」なんだと。って、俺別にツンデレじゃねえっつの!!!
「はあ…」
俺は盛大に溜め息をついた。
「よかったよかった」
まあ、泌香が喜んでるから、いいか。
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