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□6)選ばれし者
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びっくりした。


超VIPって、VIPのVはVeryだから、すでに「すごく」って意味なんだけど…超ってどんだけだよ!なんて思って気軽にひょっこり顔だしたもんだから、


突然のスーパーVIP客に対応しきれなかった!スペック足りない!!



「ごごご、ごめんなさい!!」


「あー?お前、何いきなり謝ってやがる。別に何もしてねぇだろうが」



ああ、確かに。


でもなんか、この人を前にしてなんていうか、無条件に平伏したくなるというか。


この人には相手に「煮るなり焼くなり、なんなりと…!」と言わせるオーラがあると思う。



「あ、跡部さん…ですよね?」


「タメなんだから敬語はおかしいだろうが。」


「あの…私に何か御用ですか?」




こいつワザとなのか?まあいい。






「回りくどい説明は面倒だ。お前を、生徒会の書記にする。」





へ…?今なんて?





「オイ、聞いてんのか」


「え、どういう…」


「もう一度だけ言う。お前を生徒会の書記にする。明日から会議に出席しろ。いいな」


「あの、ちょっと!」


「問答無用だ」




じゃあな、と去っていこうとする跡部。


突然でびっくりして頭回らないけど、でもこの流れ…ここで黙ってたら、私生徒会に入れられてしまう!?


そんな気全くないし、やる気もないのに私みたいなのが役員になったら迷惑もかかるだろうし…!


私は勇気を出して跡部の腕をつかんで引き留めた。




「なんだ」


「ちょっと!勝手なこと言わないで…ください。私、生徒会になんて入れません!」


「アーン?何が不満だ。」


「不満っていうか、理由も聞いてないし、なんで私が…」


「理由だぁ?そんなもんがほしいのか…」









ダンっ


跡部は私を壁に追い詰めて、グイっと顔を近づけた。



「俺様が見込んだ女だから、以上だ。」



う…この日本人離れした二つの眼に睨まれて、私は蛙のように動けなくなる。


遠巻きに私たちのやり取りを見ていたギャラリーがざわつく。


いろんないみで、怖い!!なんとか、ここを逃れないと…!















「何やってるんですか」



声のほうをバッと振り向くと、そこには怪訝な顔をしている日吉くんが!



「人が見てますけど。」


「日吉くん!」




私は跡部の横をするりと抜けて、日吉くんの背中に隠れる。

ちょ、ちょっと、と日吉くんも戸惑っているが、ココはなんとしてもこの暴君から逃げなきゃ!



「日吉くん、助けて!」


「おい、日吉。そこをどけ」


「…なんだかよくわかりませんが、泌香先輩が嫌がってるのでそういうわけにもいきません」


「なんだ、お前ら知り合いか?」


「ええ、まあ」


「付き合ってんのか?」


「なっ…!失礼なこと言わないでください!!」


「フッ。お前が他人をかばうなんて珍しいからなぁ。」


「…!とにかく、迷惑なんで引き取ってください」


「まあ、いいだろう。おい、泌香」


「は、はい…」



私は日吉くんの背中からこっそり跡部を除いた。


そしてばっちり目があった跡部は不敵な笑みを浮かべると、



「この俺から逃げられると思うなよ?」



そういって笑いながら行ってしまった。






跡部が完全に見えなくなったのを確認して、日吉くんが口をひらいた。



「まったく、あの人は」


「こ…怖かったぁ…」


「大丈夫ですか、泌香先輩」


「あ、ありがとう日吉くん…助かった…」




ま、まだ手がかすかに震えてる…


こんな恐怖を味わったのは、久々だ。





「とりあえず場所を変えましょう」


「え…」


「あまりじろじろと見られるのは好きじゃありません」





日吉くんは野次馬をきっと睨みつけると、ぱっと私の手をとってひっぱり、その場を後にした。



私は日吉くんに手を引かれながら、ギャラリーのざわつきが一層大きくなるのを背中で感じた。





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