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テニス部の宍戸と絡むようになって、ちょうど2年くらい。
きっかけは1年の臨海学校で、私が寝間着用に持ってった、お気に入りのバンドのライブTシャツを見て、宍戸が食いついてきたこと。
それからというもの、宍戸とは好きなアーティストの話や漫画の話なんかで盛り上がって一気に仲良くなり、学校へ行けば四六時中一緒にいる存在となった。
当時、宍戸は長髪ポニーテールで私はベリーショート。しかも私の方が1センチだけ身長が高かったせいか、どっちが女でどっちが男かわかんねぇ、と周りからよくからかわれた。
2年になってクラスは別れたけれど、お互い、CDの貸し借りや話がしたいとかいろいろ理由をつけて一緒に帰ったりしていた。
そんなんだから、3年でまた奇跡的に同じクラスになった時も、お互い顔を見合わせて苦笑した。
でも結局、お互い気兼ねしないから楽だし、何より話してて楽しいのでついつい一緒にいることが多くなっている。
まあ、そんな調子だから、今みたいに知らない女の子たちから呼び出されたりするのは致し方ないと思い、快く応じている。
今日は呼び出しの定番、屋上だ。
「あの…本当に泌香先輩って、宍戸先輩と付き合ってないんですか」
「うん!付き合ってないよ!まったく!」
「えっと…」
あららら。私が躊躇せず思いっきり否定したから、相手の子が言葉に詰まっちゃった。予想外だったのかな。でも事実だもん。事実、私と宍戸は付き合ってはいない。
「泌香先輩は、宍戸先輩のこと、どう思ってるんですか?」
「どうって…よき友達だと思ってるよ」
「えっと、好き、なんですか?」
「うーん…好きじゃなかったら一緒にいないけどさ、でも恋愛の好きではないよ」
「そうですか…でも、宍戸先輩はもしかしたら泌香先輩のこと、そういう意味で好きだと思ってるんじゃないですか?」
「ええー…さあ?(それは宍戸に聞けよ!知らないよ!!)」
結局宍戸のことは私は何も答えられず(当たり前だ)、呼び出した相手も、私の方が‘そういう’気はないということを知って、半分だけ納得して帰っていった。
「はーあ!」
相手が屋上から出て行ったのを見送って、私は大きなため息をついて、伸びをして、フェンスにもたれかかった。
こっちは呼び出されても、なんの罪悪感もないし、むしろ身の潔白を証明している気分でスカっとするんだけど、でもやっぱり知らない相手と話すのは緊張するし、相手に誤解を与えないように気を付けるのは、ものすごく疲れる。
今までは先輩とか同級生に呼び出されたりしてたけど、先輩はやがて卒業し、ずっと否定し続けてるから同級生もほとんどこの件に関しては絡んでこなくなった。
さて3年になったらもう大丈夫だろ!と安堵していたけど、甘かった。
2年の終わりに宍戸がレギュラーになり、3年になって一度は外されたものの、また返り咲いたという異例の騒動と短髪のおかげで一躍人気者となり、今度は後輩の女の子たちが虜になっている。
「まったく。どーなってるんだ、宍戸のくせに」
ていうか、貴重な昼休みをもう何度この呼び出しによってつぶされてきただろうか。
呼び出す方は1回かもしれないけど、私の側は、もう何十回だ。あーあ、数えておけばよかった。ていうか、コレ全部宍戸がらみなんだよな…(あ、でも2回くらい忍足の時もあったけど、ほぼ忘れた)
そう思ったらなんだか急にむかむかとしてきて、宍戸に八つ当たりしたくなった。
くそー、宍戸のくせに。モテやがって。帰ったら、とりあえず一発殴っとく!
私はこのどうしようもないムカムカを、ぐっと胸にしまって、5時間目をサボることを決め込んで寝転がり、目を閉じた。
宍戸のくせに…さえない、子どもっぽい、ただの長髪のチビすけだったのに…
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