short stories

□嗚呼、夏の日
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夏休みを目前にした今日、唯厨は俺のうちでテスト直しをしている。


今期、唯厨はとても頑張った。俺には遠く及ばないが、各教科とも結構いい点数を叩きだした。


そして今回伸びた点数により、ほんのちょっとだけ勉強の楽しさを分かったのか、


唯厨は、自分からテスト直しをしたいと俺に頼んだのだった。


模範解答はもちろん、俺のほぼ満点の答案だ。





「あ〜そっかぁ。ここをあてはめなくちゃいけなかったんだ」





俺の回答と照らし合わせながら、間違えた問いとにらめっこする唯厨。


以前の「できないできない」と嘆くばかりの頃とは大違いだ。随分成長したな。





「唯厨、頑張るのもいいが、少し休憩しないか」


「んー、あと1問だけ」




そう言っては、自然に次の問題まで手を掛ける唯厨。


いつもならすぐに休憩したがるのだが…


俺は若干、暇を持て余していた。




「では居間に行って茶と菓子を持ってこよう。そうしたら少し、休憩だ」


「うん!ありがとう。」




テスト期間も終わり、今日は部活もない休日。


こんなに自由な時間があるのに、正面に座る唯厨が向き合ってるのは、解答用紙。


いや、唯厨が勉強に一生懸命になるのはいいことなんだが…


今日はあまり質問もしてこないしな。まあテスト直しだからしかたがないか…












水出しした冷緑茶と水饅頭を持って部屋に戻ると、唯厨はまだ解答をにらんでいる。


相変わらずの頑固ものだな。仕方ない…





俺は持ってきた茶菓子を机の上に置くと、自分の座っていたところではなく、


唯厨を後ろから包むようにして肩に手を置き、手からペンを抜いた。



「根を詰めても頭には入らないぞ。」



ここでようやく、唯厨は一休みする気になったのか



「そうだね。ありがとう」



と言って、両腕を真上に上げて伸びをした。


俺はすかさずがら空きになった脇腹に腕を回す。そして少し強引に唯厨の身体を引くと、


背中からすっぽりと俺の胸の上に唯厨をおさめた。自分の頬を唯厨の頬に寄せる。


ふわりと薫る、シャンプーの香りに酔いながら、



「少し答案用紙に嫉妬したぞ」



と耳元で囁くと、唯厨が身をよじる。もちろん俺は、唯厨が耳の弱いのを知っているからそうしている。


すると、背中からでもわかる程、唯厨は体温を上げた。




「蓮二、…暑いよ」


「ん?そうか?」


「蓮二と違って、私暑がりだもん」





真夏だが、普段俺の部屋ではクーラーは点けない。


来客のときは点けることもあるのだが、唯厨は肌の乾燥が気になると言って点けたがらない。


そのため今は扇風機で部屋の空気を循環させている程度。




肩越しに見える、TシャツのU字型の口から覗く唯厨の胸元はじっとりと汗ばんでいた。









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