short stories

□099:洗濯器
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「あっつー!!」


六角中テニス部。

この灼熱の太陽の下、

ありえないくらい練習しちゃってマス!




099:洗濯機




ウィーン ガッチョン
ウィーン ガッチョン
ウィー…


あ、決してロボットの真似ではないんですよ。

これは今私の目の前で動いているものの音。



「唯厨ー!悪いけどコレも洗っといてくれ!!」



バサッ

次から次へと運ばれてくるタオルやらユニホームやら

なんやらかんやら…


「(悪いと思ってんなら持ってくんなーー!!)」


そう。マネージャーの私は今、洗濯中なのです。

しかも本日4回目。

たまに「コレ絶対テニス部のじゃない…」ていうようなものも混じってるため、

仕分けが面倒でとにかく全部洗ってしまおうということなのです。

野球部め、陸上部め!



「あ゛ー!あ゛ーづーい゛ーよぉー」


自分のポロシャツの襟をぱたぱたとさせながら、自分の干した洗濯物を見上げた。

いいな、お前たちは涼しそうで。

うらやましそうに眺めていると、向こうの方からものすごい勢いで走ってくる人影が。




「唯厨ー!やっと休憩だよー!!」




サエこと佐伯虎次郎が後ろから私の背中に乗っかってきた。



「うわぁ!」

「唯厨ー!お疲れさん」

「あついーー!!サエくっつくなぁー、死ぬーー!!!」

「俺だってアツイよー。がまんがまん」

「サエは自分でアツイだけなのーー!私はサエから暑さが来るのー!!」

「引き離されるともっとくっつきたくなるなー」

「うわぁーー!サドだぁーーセクハラだぁーーー!!!」




バッシャーン




私とサエがぎゃあぎゃあ騒いでいると、突然大量の水が上から降ってきて、2人は全身水浸しになった。

何事かと思って上を見上げると…仁王立ちするバネがいた。バネさん!逆光です!!



「あ、あはは。バネ、元気そうねぇ…」



どうやらバネさんにバケツ一杯水ぶっかけられたらしい。



「おぅ…俺はいつでもバリバリ元気だぜ!」

「あ、あの、何か洗うものあったら…ね、あの(オコらないで)」

「とにかく…





お前ら見てるだけで暑くるしいんだよ!!イチャイチャすんならどっかいけ!!!」






「はーい。じゃあ、どっか行きまーす。行こっ唯厨」

「チッガーウ!イチャイチャしてないし、私は被害者!セクハラの被害者!!」

「アレ?愛があるんじゃないの?」

「ナイ!一方通行!あたしも暑いの嫌!!」

「お前らいい加減に…





ドッバーン





キレたバネさんの後ろから、またバケツ一杯、水が吹っ飛んできた(ちなみに今度のはでっかいポリバケツ)


「ひやし中華、冷やし中か?…ブッ」


その正体はダビデだった。


「こんのぉー、ダビデ!!」



ツッコミとマジギレが重なって、バネさんは水浸しでもヒラリと宙に舞い、ドロだらけの靴でダビデの後頭部めがけてケリをかました。



「いってーバネさん!うわ、俺の髪の毛ドロっドロじゃん!!」

「はっはっは。ザマーみやがれってんだ。」

「俺のヘアー‘部屋’でしっかりキメてきたのに…」






シュピーーーー






「イテテテテテ!!!」




ダビデが痛がって暴れだしたので、今度は何!?と思って振り返ると、

ホースの先をつまんで、それをダビデの頭めがけて発射している木更津の姿があった。



「そのがちがちワックスも泥も全部落としてあげたよ。サッパリした?」



くすくすと笑う木更津。

ダビデの髪はビタビタになってダラリと垂れている。









「「「こーなったらやけくそだぁ!!!」」」








突然怒りの声をあげたサエ、バネ、ダビデの3人は、バケツの水をぶちまけたり、泥をぶつけ合ったりして暴れ始めた。




「え、ちょっと待ってよ…なんでそーなるの!」




止めさせようとサエに近寄り、声をかけようとしたそのとき、サエが急に下へよけた。

そして私の頭部に、




べちゃっ





ダビデの投げた泥球がみごとにクリーンヒットした。





「「「「あ…」」」」






「よくもやったわねぇ…ダビデ!!!」


「いいい、今の業はワザとじゃなっ…」





バコーン!





ダビデの顔に唯厨の靴が直撃した。






「いってー、あーもうチクショウ!!」

「ナイスショーッ!唯厨!!」

「ハッハッハ!どーだダビデ!」

「いいぞー唯厨!やれやれーー!!」

「おもしろそうだから俺も入っていい?」





結局、止めに入った(?)唯厨と木更津も交ざってみんなで水鉄砲や泥合戦をして、あたりは水浸し。


というか泥びたしになった。








――――








「たっだいまー。いやー、遅くなってゴメン!唯厨さん、今日晴れてよかったね。絶好の洗濯日和にな…」

数分後、買出しから帰ってきたのは、部長の葵剣太郎。








「オラァー唯厨!行けーー!!!」

「イエッサー!サエをつぶせー!!」

「ちょっと、4対1はおかしいんじゃない!!?」

「カタイこと言わない言わない(くすっ)」

「先生の先制コウゲキ…ブッ」


ドカッ


「うおー!ダビデが味方にやられたー!!」





そんな部長にお構いなしに暴れる人たち。





「なに…やってんの?」

「あ、剣太郎、おっかえり!買い出しご苦労!」

「唯厨さん、洗濯…」

「うん。ごめんね、あと1/3くらい!」

「いえっ、あの、洗濯物…」

「え?」




「泥まみれだけど…?」





六角中テニス部。

この灼熱の太陽の下、

午後からみんなで洗濯のやり直しをするハメになった。



「連帯責任なのね〜〜」

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