short stories

□012:痕跡
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「唯厨、起きろ」

「ん〜」

「唯厨。支度をしないと部活に遅れるぞ。」



うっすらと目を開けて、唯厨が起きたのを確認したが、


昨日の疲れが残っているのか、けだるそうに眉を寄せている。すぐに身を起こすのはつらそうだ。



俺は着替えの途中だったが、シャツを羽織った状態で唯厨の腕を引っ張り半身を起こす。


力のない唯厨はそのままだらりと俺の胸に身を預けてきた。


そしてかろうじて開けた目で俺の首筋の痕を愛おしそう眺める。




「蓮二ぃ…痕いっぱい。えへへ」



「言い忘れていたが…お前、覚悟しておけよ」




俺の一言に驚いた唯厨は一瞬で目を見開いてきょとんとする。

どうやら今ので目は覚めたようだ。

俺は自分の首についた痕を指差して言う。




「今日俺は、コレを隠すつもりはないからな」


「へ?」


「むしろみんなに見せびらかして回ってやろう。」


「な!?は、恥ずかしくないの、蓮二!!?」


「何を言っている」


「え?」


「恥ずかしいのはお前の方だろう」




唯厨は訳が分からないという顔をして俺をじっと見上げる。

仕方がない、教えてやろう。




「分からないのか。俺にこれだけの痕があるということは…




それだけ昨晩はお前が積極的だったと皆に知らせることが出来るからな。




俺は痛くも痒くもない。むしろ微笑ましいくらいだ。」




うっすらと浮かべた笑みを見て、唯厨の顔はさっと血の気が引いた。

これに懲りて、今後俺に仕返ししようなどとは考えないだろうな。

それにしても、皆の反応が今から楽しみだ。

あと、唯厨が異常なほど恥ずかしがる姿も…




「早く着替えろ。置いて行くぞ」




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